改訂新版 世界大百科事典 「サバクヤマネ」の意味・わかりやすい解説
サバクヤマネ
desert dormouse
Selevinia betpakdalaensis
砂漠に適応した特殊なヤマネで,本種1種だけで齧歯(げつし)目サバクヤマネ科を形成する。カザフ共和国のバルハシ湖北西部の砂漠に分布。体長7.5~9.5cm,尾長5.8~7.7cm,体重約20g。体毛は密生し,背面は灰色,腹面は白色がかる。毛がわりの方法は独特で,毛は表皮ごと脱落し,表皮の下にはすでに新しい毛が生えている。生態や習性はほとんど知られず,荒れ地や砂漠に散在するやぶの下に穴を掘って生活するといわれるが,飼育下では寒いときだけ穴を掘り,ふだんは葉や小さな石の下を隠れ場とする。暑さには非常に弱く,多くのものは夕暮れから活動し始め,夜中動き回り,昆虫やクモなどの無脊椎動物を食べるらしい。気温が5℃以下になると冬眠状態となり,呼吸数は108回/minから25回/minに減少する。交尾期は5月と,おそらく7月の2回で,6~8頭の胎児をもった妊娠雌が捕獲された記録がある。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報