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砂漠 さばく desert

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

砂漠
さばく
desert

降水量が少いのに蒸発量が多く,乾燥しているため草木がほとんど生育せず砂礫や基盤岩石が露出している地域。砂礫におおわれている砂漠を砂砂漠,基盤岩石が露出している砂漠を岩石砂漠という。多くは中緯度高圧帯下に分布 (サハラアラビアカラハリ砂漠など) するが,大陸の奥地 (ゴビ砂漠) ,高い山脈にさえぎられたりしたところ (モハーベ砂漠) ,強い寒流が流れる海岸の近く (アタカマ砂漠) にも形成される。

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デジタル大辞泉の解説

さ‐ばく【砂漠/沙漠】

雨量が極端に少ないため植物がほとんど育たず、岩石や砂礫(されき)からなる地域。サハラカラハリゴビなど。
[補説]書名別項。→砂漠

さばく【砂漠】[書名]

《原題、〈フランスDésert》フランスの作家ル=クレジオ長編小説。1980年刊。

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百科事典マイペディアの解説

砂漠【さばく】

沙漠とも書く。植物がほとんど生育不能なほど雨量の少ない不毛の土地。乾燥盆地,インゼルベルク(島山),砂丘,ワジなどの乾燥地形が発達し,特有な乾燥土壌(砂漠土)や干上がった塩の堆積層などがみられ,オアシスだけが例外的に緑の景観を示す。
→関連項目砂丘砂漠化砂漠気候

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世界大百科事典 第2版の解説

さばく【砂漠】

降水量が少なく,植生が見られないか少なく,人間の活動も制約されている地域。乾燥地域と同じ意味に使用されることもあるが,一般的には乾燥地域のうち,より乾燥した部分に使用されている。英語desertはラテン語のdesero(見捨てる)に由来するもので〈見捨てられた土地〉という意。その範囲は現在,最も広く引用されているメグズP.Meigsの乾燥地域分布図のうち,極乾燥地域と乾燥地域(狭義の)に相当する。南極などの高緯度地域や高山地域にも乾燥した地域が見られ,寒冷地砂漠と呼ばれているが,この地域は乾燥地域の特性より寒冷地域の特性の方が著しいために〈砂漠〉に含められないことが多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

砂漠
さばく
desert

降水量が少ないため植物が生えていないか、まばらな所。南極などの高緯度地域や高度の大きい山地にも乾燥した荒地がみられ寒冷砂漠とよばれているが、乾燥地の性格より寒冷地の性格が強く、一般的には「砂漠」に含められていないことが多い。[赤木祥彦]

用語

研究者を中心に「沙漠(さばく)」という漢字を使用する人が多くなっている。「砂漠」から受ける「すなさばく」のイメージを避けるためである。しかし、「沙」も「砂」もともに「すな」を意味する漢字である。「沙」が本字、「砂」が俗字であり、「砂漠」が当用漢字になるまでは、ほとんど「沙漠」が使用されていた。ところで「沙漠」の本来の意味は「すなさばく」であり、中国ではこの意味で使用されている。「さばく」を意味する漢字は「荒漠」である。国語辞典で確かめると、明治・大正時代に刊行された国語辞典はすべて「砂漠」を「すなさばく」と説明しており、「荒漠」は取り上げていない。大槻文彦(おおつきふみひこ)編集の『大言海(だいげんかい)』(昭和8年版)では「地、沙ノミニシテ、流水モ草木モナキ広大ナル原野ノ称。」と説明している。地理(学)辞典は、1906年(明治39)に刊行された志賀重昂(しげたか)校閲の『地理辞典』以降、「サバク 砂(沙)漠 desert」の項目を設け、現在使用されている用法と同じに説明している。「desert」を意味する「荒漠」をだれも知らなかったためであろう。和辻哲郎(わつじてつろう)が1928年(昭和3)に執筆した『風土』で「desertに相当する言葉がないので、本来は『すなさばく』を意味する沙漠を使用する(要約)」と書いているため、一般的には昭和の初めころから「沙漠」が「さばく」を意味するようになり、新しく「砂沙漠」が使用されるようになったのであろう。[赤木祥彦]

範囲

砂漠の範囲は、どの指標によって乾燥地帯の範囲を決めるか、乾燥した所のどの範囲を砂漠とするかによって異なる。乾燥地帯の区分法としては、1953年にアメリカの地理学者メイグスPeveril Meigs(1903―1979)が、水収支(降水量と蒸発散位――水分が十分あるときの蒸発散量)により乾燥地帯を極乾燥・乾燥・半乾燥に区分した方法が広く受け入れられており、このうち前二者を砂漠とするのが一般的である。また、1992年に国連環境計画(UNEP)が、砂漠化が発生する範囲を決めるために乾燥地帯を区分し、降水量を蒸発散位で割った値が0.05未満の地域を超乾燥、0.05~0.20未満を乾燥、0.20~0.50未満を半乾燥、0.50~0.65未満を乾燥亜湿潤とした。そして「乾燥・半乾燥・乾燥亜湿潤地域で発生する土地の劣化」を砂漠化と定義し、超乾燥地域は乾燥しすぎているため砂漠化は発生しないと説明している。この区分はメイグスと同様に水収支を指標としているが、計算が簡単なため広く使用されている。メイグスの砂漠の範囲は陸地の20.5%(極乾燥4.3%、乾燥16.2%)であり、UNEPの超乾燥は7.5%・乾燥は12.1%で、両者を加えた面積は19.6%となるので、UNEPの区分では、この範囲を砂漠とするのが適切である。[赤木祥彦]

呼称・分類

砂漠はさまざまな指標で区分されているので、「何々砂漠」とよばれる呼称がたくさんある。
(1)基本的な指標――海洋と湿潤地帯で囲まれた地理的範囲を示す呼称 この場合、砂漠が連続していても、高い崖(がけ)などで降水量や気温などに著しい相違があると、別の呼称でよばれている。アフリカ大陸のナミブ砂漠・カラハリ砂漠・サハラ砂漠・ソマリーチャルビ砂漠、ユーラシア大陸のアラビア砂漠・イラン砂漠・タール砂漠(大インド砂漠)・トルキスタン砂漠・タクリマカン砂漠・ゴビ砂漠、オーストラリア大陸のオーストラリア砂漠、北アメリカ大陸の北アメリカ砂漠、南アメリカ大陸のペルー砂漠・アタカマ砂漠・モンテ砂漠・パタゴニア砂漠、以上の16砂漠が基本的な砂漠である。
(2)基本砂漠のうちの砂砂漠の部分の呼称 アラビア砂漠のルブ・アル・ハーリー砂漠、オーストラリア砂漠のシンプソン砂漠など。トルキスタン砂漠の一部をキジルクム砂漠、カラクム砂漠としている地図帳がたくさんあるが、「クム」は砂砂漠を意味する現地のことばである。北アメリカ砂漠はチワワ砂漠、ソノラ砂漠、モハーベ砂漠、グレート・ベースン砂漠に区分されているが、この区分の指標は植生の相違である。
(3)基本的砂漠の一部の地方に対する地域的名称 サハラ砂漠のリビア砂漠、北アメリカ砂漠のグレート・ソルト・レーク砂漠など。
 以上の砂漠には範囲があるが、次の指標は具体的な場所とは関係のない分類である。
(4)成因による分類(詳細は後述参照) 亜熱帯砂漠、雨陰砂漠、冷涼海岸砂漠、大陸内部砂漠(内陸砂漠)
(5)地表の特性を基準とした分類 岩石砂漠、礫(れき)砂漠、砂砂漠、粘土砂漠
 以上がおもな分類であるが、このほかにもさまざまな指標で分類された砂漠名がある。[赤木祥彦]

成因

砂漠は成因により、以下の四つに分類される。
(1)亜熱帯砂漠 亜熱帯高圧帯では下降気流が発達しているため、大陸の東側を除き乾燥地帯となっている。大陸の東側に降雨があるのは、大洋上にある高気圧から吹く貿易風とモンスーンのためである。
(2)冷涼海岸砂漠 沖合いを寒流が流れており、しかも深海の冷水がわき上がっている所では、この冷たい海水上の大気が温かい陸上に移動しても降水をもたらすことはできない。
(3)雨陰砂漠 恒常風(つねに一定方向に吹いている風)の風上側が高い山脈で遮られている所は、山脈を越える際に降水をもたらし、風下側には乾いた風が吹き降りてきて乾燥地帯となる。
(4)内陸砂漠 大きな大陸の内部は風上側に顕著な山脈が存在しなくても、海からの風は途中で湿気を落としてしまうために乾燥している。
 世界のおもな砂漠は以上にあげた成因の二つないし三つの組合せにより形成されていることが多い。その面積がもっとも広いサハラ砂漠は、亜熱帯砂漠であると同時に、内陸部は内陸砂漠、大西洋岸沿いはカナリア海流の影響を受ける冷涼海岸砂漠である。トルキスタン砂漠からゴビ砂漠にかけてのユーラシア内陸部は内陸砂漠であり、同時にヒマラヤ山脈、大興安嶺(だいこうあんれい/ターシンアンリン)山脈などによる雨陰砂漠である。北アメリカ大陸の砂漠は面積は広くないが成因は多様である。バハ・カリフォルニアは冷涼海岸砂漠である。南のソノラ砂漠は夏は亜熱帯高圧砂漠、冬は雨陰砂漠の性格をもつ。北のグレート・ベースン砂漠は内陸および雨陰砂漠である。アタカマ砂漠が世界でもっとも乾燥しているのは、亜熱帯高圧帯に位置し、沖合いをペルー海流が流れ、風上側にアンデス山脈が位置しているためである。[赤木祥彦]

気候

砂漠の降水の特色は量が少ないことと不規則なことである。そして降水量が少なくなるほど不規則性が大きくなる。冷涼海岸砂漠は降水量が少なく、年平均降水量が50ミリメートル以下の所が広い範囲を占める。アタカマ砂漠の中心部に位置するイキケの年平均降水量は2ミリメートルであるが、連続14年無降水を記録したことがある。ペルーのリマの年平均降水量は約10ミリメートルであるが、最大年降水量は1524ミリメートルである。他のもう一つの特色はしばしば局地的な豪雨となることである。そのため平坦(へいたん)な砂漠では局地降雨が移動してゆくのを目撃することがある。ワジwadiの河床は砂地となっているためにキャンプ地として好適であるが、上流に降った豪雨により溺死(できし)者が出ることもある。
 温度との関係により相違があるが、一般的には年平均降水量が20~30ミリメートル以下の所では植生はほとんどみられなくなる。反対に降水量が増大すると草地となる。雨の多いオーストラリア砂漠はもっとも乾いた所でも約125ミリメートルの降水量があり、地下水を利用して牧場となっており、降水量の多い所には砂漠カシなどの林がみられる。植生が少なく、快晴の日が多い砂漠は世界でもっとも高温で温度変化の大きい地域である。夏季には45℃前後になるのはまれではなく、最高気温はイラクのバスラで記録された58.8℃である。地表面の温度はさらに高く、紅海付近で最高83℃を記録している。冬季の内陸砂漠は低温となり、カザフスタンのアルマトイでは零下34℃を記録している。日変化は一般的には17~22℃程度であるが、アメリカ、カリフォルニアの「死の谷(デス・バリー)」では41℃を記録している。年変化としてはスーダンでの55℃から零下2℃まで低下した記録がある。冷涼海岸砂漠は亜熱帯に位置しているが、夏にも高温とはならず、40℃を超えることはほとんどない。[赤木祥彦]

地形

地形は隆起運動や断層運動など、地球の内部から作用する内的営力と風化作用や侵食作用などの外的営力により形成される。砂漠の成因は気候であるが、気候は外的営力だけに作用するため、内的営力が強く働いている造山帯と弱い安定陸塊の地形では、同じ砂漠気候に位置していても大きな違いがある。造山帯では機械的風化作用が卓越している。機械的風化作用の主営力としては、大きな温度変化による日射風化、塩類が割れ目に侵入し、結晶や温度変化により増大して、その圧力で破壊する塩類風化があげられる。砂漠の年平均降水量は湿潤地域と比較するとはるかに少ないが、しばしば豪雨となり、しかも植生が少ないために侵食や運搬力が強く、地形を形成する主営力となっている。山地斜面は急勾配(こうばい)であり、地形発達の初期には多量の砂礫(されき)が生産されるため、その前面にバハダbahadaとよばれる連続した扇状地が形成される。山地斜面はその勾配を変えずに侵食され後退するので、その前面にペディメントpedimentとよばれる侵食緩斜面が拡大し、やがてインゼルベルクInselberg(ドイツ語)とよばれる孤立丘となり、最後には孤立丘も消滅し、広大な平坦地形となる。降水量より可能蒸発量のほうがはるかに大きい砂漠では、しばしば流水が海まで到達しない内陸流域がみられ、そのもっとも低い所にはプラヤplayaとよばれる、降雨後一時的に水がたまる非常に平坦な地形がみられる。
 安定陸塊では地盤が長期間安定しているため侵食作用は終末期にあり、地形に岩石の特性と緩やかな地殻運動の特性が反映している。サハラ砂漠の地形は、中央部に第三紀に噴出し長期間侵食を受けてきたアハガルとティベスティの両山地以外は、基盤が緩やかに起伏している地形である。この起伏する基盤の低所には砂混じりの礫層や砂海が堆積(たいせき)しており、高まった所には、ところどころ基盤が露出し、風で運ばれた砂で侵食されたハマダがみられる。また、水平な地層の硬い岩石が分布する所では、侵食から取り残された台地地形が散在している。オーストラリア砂漠の地形は、エーア湖付近を中心とする緩やかな造盆地運動を受けているが、エーア湖に流入する河川で運ばれたシルト(粒径0.004~0.06ミリメートルの粒径の粒子)・粘土が堆積するため、平坦な地形となっている。中央部からインド洋にかけては、長期間の侵食により形成された侵食平原である。この堆積平原と侵食平原の低所にはシンプソン砂漠などの砂砂漠が発達しており、ところどころにマクドネル山脈、フリンダーズ山脈などが散在している。これらの山脈は褶曲(しゅうきょく)した非常に硬い岩石が、長期間侵食に抵抗して残っている地形であり、褶曲構造がそのまま山脈の形態に表れている。
 風による侵食作用としては、未固結な細粒物が吹き飛ばされるデフレーションdeflationと、砂が風により吹き付けられて研磨するアブレーションablationがある。前者によって形成されるおもな地形としては砂漠窪地(くぼち)やデザート・ペーブメントdesert pavement、後者による地形としてはヤルダンyardangがある。風による堆積地形としては、砂床、砂丘がある。砂床はその表面に風紋がみられるだけのまったく平坦な平原であり、砂の厚さは50センチメートル程度のこともあり、その面積は10万平方キロメートル近くに達することもある。おもな砂丘としては三日月状の平面をもつバルハンbarchan、風向に直交する横列砂丘、風向に平行する線状砂丘がある。砂床と砂丘をあわせたところが砂砂漠であるが、そのほとんどは安定陸塊に分布しており、造山帯に位置している南北両アメリカ大陸の砂漠ではともに砂漠全体の1%以下である。安定陸塊の緩やかな低所には砂が吹き集められ、その大部分は3万平方キロメートル以上の面積で砂海とよばれており、最大の砂海は65万平方キロメートルのルブ・アル・ハーリー砂漠である。なお、サハラ砂漠で砂砂漠が占める面積の割合は約20%、アラビア砂漠で約30%、オーストラリア砂漠で約40%であるが、オーストラリア砂漠は固定砂丘である。安定陸塊に位置していない中国で、砂砂漠が約40%を占める原因は、タクリマカン砂漠の大部分が砂砂漠であるためと、基盤が平坦なゴビ砂漠にも砂砂漠が発達しているためである。[赤木祥彦]

砂漠の最大可能蒸発量は降水量の500倍以上であり、砂漠は絶対的に水不足の地域となっている。しかし、特定の場所では大量の水が得られる。
(1)砂漠の最大の水源はナイル川やコロラド川などの外来河川であり、アスワン・ハイ・ダムの建設により、エジプトの耕地は60%増加した。
(2)安定陸塊の地下には大量の被圧地下水が存在し、サハラ砂漠にはナイル川の年間流量の800倍の水があると推定されている。この地下水の塩分濃度が薄い層には1000メートルを越す深井戸が掘削され、灌漑(かんがい)に利用されている。
(3)造山帯の盆地に堆積している砂礫層の中には自由地下水が存在している。アリゾナ州南西部のソノラ砂漠では、福岡県の水田に相当する面積がこの地下水で耕地化されており、また人口約100万人のトゥーソン都市圏(アリゾナ州)で使用される水もすべてこの地下水に依存している。
(4)イランから中国西部にかけてなどの山脈には地形性の降水があり、山麓(さんろく)に発達する扇状地では伏流水となっている。この伏流水は古くから地下水道により地上に導水され利用されてきた。シルク・ロードはこのオアシスを結ぶ交易路であった。
 第二次世界大戦後、大規模ダムの建設や、多数の深井戸の掘削により砂漠が急速に開発されてきた。しかし、この人工オアシスによる開発は大きなマイナスも伴った。アスワン・ハイ・ダムは大規模な耕地をもたらしたが、反面、肥料分となっていたシルトがダムの底に堆積することにより肥料分が不足したこと、河床が低下し、デルタの先端が沿岸流で侵食されだしたことなどである。また地下水、とくに塩分を含む被圧地下水の灌漑は塩害をおこしやすく、各地に放棄された耕地がみられる。[赤木祥彦]

観光地

アメリカ合衆国南西部の乾燥地帯は国立公園がもっとも多い地方である。変化に富んだ大峡谷が続く「ザイオン」、砂漠にすむ多様な動植物を保護している「サグアロ」、先住民の住居跡を保存している「カサグランデ遺跡国定公園」など、さまざまな特色をもった国立公園・国定公園が多く、夏の観光シーズンには予約していないと宿がとれないこともあるほど訪問客が多い。ナイル川沿いの古代エジプト文明の遺跡は砂漠を代表する観光地であるが、サハラ砂漠中西部の高地に位置するタッシリ・ナジェールの岸壁画には、牛・馬・ラクダなどが描かれており、サハラの乾燥化を示す証拠として関心がもたれている。これらの観光地のほかにも、オーストラリア砂漠平原上にそびえる高さ335メートルの巨岩ウルル(エアーズ・ロック)、風の強さの違いでその形態を刻々と変化させる大砂丘群と2000年も生存する植物「奇想天外(ウェルウィッチア)」で知られるアフリカ南西部のナミブ砂漠、ペルー砂漠のナスカの地上絵、緑の大平原だけで何もないことが日本人をひきつけているモンゴルのゴビ砂漠など、砂漠にも多くの観光地がある。[赤木祥彦]

砂漠の生活

砂漠の民は遊牧と狩猟・採集の2種類の生業形態のどちらかを選択して環境に適応している。後者はきわめて少なく、現在ではカラハリ砂漠のサン人(俗称「ブッシュマン」)があげられるくらいである。前者はたいへん多く、中央アジアのトルクメン人、アラビア半島のベドウィン、サハラ砂漠のトゥアレグ人などが有名である。遊牧民にも狩猟・採集民にも共通するのは移動である。前者は食物すなわち牛、ラクダ、馬、ヤギ、羊とともに移動し、後者は食物すなわち野生動物と果樹や根茎を求めて移動する。牧草や野生動物の得られる場所、そしてなによりも水のある場所に新しいキャンプをつくるのである。こうした場所のうち、いつも水の得られる所がオアシスとよばれ、砂漠の生活の拠点となってきた。オアシスでは農耕も可能であり、実際そこに定着して農耕を行う人々もいた。オアシスはまた交易の中心地でもあり、しばしばさまざまな民族と文化の交流点になったのである。
 このように砂漠の人々といえども、けっして孤立して生きてきたのではなく、つねに定住農耕民との交易と戦争という関係を通して存在してきたのである。またときには遊牧民が定住化して農耕民になったり、その逆のプロセスが生じることもある。
 砂漠に住む人々の社会組織は定住農耕民と同様、多様である。サン人の社会では家族が唯一の恒久的社会単位であり、平均10家族が集まってキャンプをつくるが、頻繁に離合集散する。遊牧民の社会は首長制を発達させることも多く、ときには中央アジアや北アフリカにおいて歴史上重要な大帝国をも建設した。遊牧民における政治的統合の度合いは人口密度と、したがって究極的には水と牧草地の豊富さに依存している。しかし彼らに共通するのは、集団が離合集散し構成員が変わる流動性である。
 砂漠の民に固有の宗教あるいは世界観が存在するかというのはむずかしい問題である。民族学者シュミットは遊牧的文化圏と農耕的文化圏を対置させて、前者は男性神による一神教と結び付き、後者は原始母神的信仰と結び付くと主張した。こうした傾向がみられることは事実だが、同時に多くの疑問も提出されている。また最近では定住農耕民に特徴的な妖術(ようじゅつ)の観念が移動の民には希薄であるという指摘もなされている。[加藤 泰]

植生

砂漠を特徴づける環境条件は、年降水量200~250ミリメートル以下、過度の地表面蒸発、日および年単位での大きな気温較差などである。これらはいずれも植物の生育にとっては過酷な条件であるが、植物は土壌や空気の乾燥、および低・高温条件と、その変化にいろいろな形で適応して生育していく。砂漠に生える乾生植物の葉は一般に極端に小さいか、退化して蒸散を抑えたり、多肉葉か硬葉となって水を蓄える。また厚いクチクラ層や陥没したへこみの底に気孔をもって、蒸散を減らしている。さらに、細胞液中の糖の濃度は乾期が近づくと増大し、細胞の吸水力や組織の保水力をあげて、長い乾期中の葉の蒸散抵抗を高めている。一方、乾期に入ると柔組織から多量の油滴が出たり、表皮細胞の液胞にシュウ酸カルシウム塩などが集積され、熱や乾燥から植物を保護している。アカシア属やヘリオトロピューム属、ブロムス属などの根は肥厚して、デンプンや水分の貯蔵器官の役割をするなど、根系も水分欠乏に対する適応形態をもっている。
 砂漠の植生には大陸によって著しい差がある。アジアではハロキシロン属やサルソラ属、北アフリカではアカシア属やプロソピス属、北アメリカではラレア属、オーストラリアではユーカリ属やアカシア属、アリゾナ・メキシコ・ペルーなどではハシラサボテンが代表的な植物となる。[大賀宣彦]

動物相

砂漠に生息する動物は、その種数・個体数ともほかの地域に比較して貧弱である。これは、動物の飼料となる植物の貧弱さと水の欠乏が原因している。また、急激な気温変化も砂漠に動物が生息しにくい原因となっている。そのため、砂漠に生息する動物たちの多くに、砂漠の環境に対するなんらかの生理的、形態的、あるいは生態的な適応をみることができる。また、砂漠にはほかの地域には生息しない特有の動物たちがみられる。大形動物ではラクダがその典型的な例である。ラクダは、砂地に適した扁平(へんぺい)な足、砂塵(さじん)を防ぐための自由に開閉する鼻孔や長いまつげ、1週間以上水がなくても過ごせる生理的機構などを備えている。現生のラクダは2種おり、ヒトコブラクダはサハラ、アラビアの砂漠地帯に、フタコブラクダは中国のゴビ砂漠に、いずれも家畜として分布している。サハラにすむトビネズミ属Jaculusには、次のような生態的特徴がある。(1)昼は穴に隠れ夜間涼しい間に活動する。(2)尿の濃度調節によって体内の水の保持をする。(3)とくに包水量の多い植物種を摂取する。(4)降雨後の好環境時に迅速に生殖活動に入る。このように乾燥地への適応的特性を有している。このトビネズミに類似の形態をしたものに、北アメリカに生息するカンガルーネズミ属Dipodomysや、オーストラリアに生息するハネネズミ属hopping mouse/Notomysがあり、この両者はまったく別属ではあるが、ともに乾燥への適応進化を遂げ、よく似た形態になったものである。
 砂漠に生息する捕食動物は水分をその餌(えさ)となる動物から摂取することができる。カラハリ砂漠では、セグロジャッカルやブチハイエナがシロアリを大量に捕食して水分を摂取している。鳥類ではサケイ(沙鶏)のように砂漠に特有のものもいるが、ワシタカ類の多くは砂漠に隣接するサバンナやステップとの共通種であることが多い。チョウ、ゴミムシダマシなどの昆虫、サソリ、ムカデなどは、砂漠にわずかに訪れる雨期によく発生する。[大澤秀行]
『ロー・テート著、古賀忠道監修『砂漠に生きる動物』(1972・鶴書房) ▽S・レオポルド解説、奈須紀幸訳『砂漠』改訂版(1974・タイムライフブックス・ライフ・ネーチュアー・ライブラリー) ▽J・C・トンプソン著、小原秀雄監修『砂漠の生命』(1977・講談社) ▽赤木祥彦著『沙漠の自然と生活』(1990・地人書房) ▽赤木祥彦著『沙漠ガイドブック』(1994・丸善) ▽田中二郎著『最後の狩猟採集民』(1994・どうぶつ社) ▽ミランダ・マッキュイティ著、加藤珪訳『ビジュアル博物館51 砂漠』(1995・同朋舎出版) ▽赤木祥彦著『図説 沙漠への招待』(1998・河出書房新社) ▽篠田雅人著『砂漠と気候』(2002・成山堂書店) ▽赤木祥彦著『沙漠化とその対策――乾燥地帯の環境問題』(2005・東京大学出版会) ▽恒川篤史他編『乾燥地科学シリーズ』全5巻(2007~2010・古今書院) ▽小堀厳著『沙漠――遺された乾燥の世界』(NHKブックス)』

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