スマート工場(読み)スマートコウジョウ(英語表記)Smart Factory

デジタル大辞泉 「スマート工場」の意味・読み・例文・類語

スマート‐こうじょう〔‐コウヂヤウ〕【スマート工場】

工作機械生産ラインなどをコンピューターネットワークで接続し、生産効率品質管理向上を図る工場IoT化を進めることで、部品調達の効率化、省電力化、故障予知などを実現し、生産性を高めることを目的とする。スマートファクトリー。→インダストリー4.0

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵 「スマート工場」の解説

スマート工場

高度なファクトリーオートメーション(工場自動化)を実現した上で、工場内の機器や設備を相互ネットワーク(インターネット)で接続し、IoT (Internet of Things:設備と設備、設備と人をネットワークで接続する) 化することで生産革新を実現する工場。このような生産システムの構築で産業・製造業の再躍進を図るとして、ドイツでは政府が主導する「Industry 4.0」(インダストリー4.0)などの取り組みが、米国では「Industrial Internet」などの取り組みが進められている。
ドイツ政府がインダストリー4.0を提唱するのは、産業革命の第4段階だとの定義がある。18世紀半ばから19世紀にかけてイギリスで起きた産業革命は、蒸気機関発明により工場制機械工業が始まったことを指している。これに加えて、19世紀後半に米国で電気エネルギーを活用した大量生産が行われるようになったことを第2次産業革命といい、コンピューターを利用するオートメーションの実現を第3次産業革命と呼ぶ。更にこれに引き続き、人工知能(AI)やビッグデータを使ってものづくりやサービスの生産性を高める第4次産業革命を起こすとする。IoTにより、工程や品質、進行状況など様々な情報のやり取りを行う「見える化」「つながる化」をもって、相互に連携を深め協調して働くことのできる次世代型のシステムの構築が可能となるという。また、単なる大量生産ではなく、顧客のニーズに細かく対応できる柔軟な製造システムが組めるとする。
ドイツや米国のほか、中国は「中国製造2025」、インドは「Make in India」と称して同様の取り組みを進めている。ただし、各国の背景とする産業構造や製造業の一般的な生産方式はそれぞれ相違があり、目指す方向にもいくぶんかの違いがみられる。しかし、いずれの国も製造業の比重が大きく、世界市場において大きな位置を占める存在であること、その上で、将来的な国際競争の観点から見ると一定の行き詰まりを呈していることが共通の特徴として挙げられる。日本もそれら諸国とおおむね類似した位置にあるが、早くから自動機器や産業ロボットなどの導入が進んでいたことから、その延長とみなされがちでスマート工場化は遅れがちとも評された。日本政府も2016年度中には実証実験ができるスマート工場を全国に10カ所程度設置するとし、IoTを活用し国際競争力向上につなげる考えである。また、先行的な試行をする企業も出始め、産業界でも急速に関心が高まってきている。

(金谷俊秀 ライター/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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