ハラフ期(読み)ハラフき(その他表記)Halaf period

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハラフ期」の意味・わかりやすい解説

ハラフ期
ハラフき
Halaf period

シリア北東部,トルコ国境に近いテル・ハラフ遺跡出土の土器を標準とし,北メソポタミア,テル・アルパチヤにおけるハッスーナ期に後続する文化期をいう。ハラフ式土器は表面は研磨され,赤褐色,クリーム色の化粧土の上に赤,白,橙,黒で種々の幾何学文,牛頭をはじめとする形象文を交えた多彩な文様構成を特徴とする。また胎土に水簸 (すいひ) した粘土が用いられ,高温で焼成されるなど製陶技術の進歩が著しい。ハラフ式土器は北イラク,シリア,トルコにいたる広大な地域に分布し,黒曜石の産地であるバン湖や銅の産地であるディヤルバクル地方 (トルコ南東部) の遺跡から出土することから,ハラフ文化人はその交易にたずさわったと考える説もある。銅製品としてピン,玉が発見されている。ハラフ期の集落はあまり明らかでないが,トロス型と呼ばれる円形の建物跡がしばしば発見される。円形建物の性格は明らかでないが,前室や通廊と考えられる長方形の建物跡の加わる例があり,神祠とする説が有力である。この時期の特徴ある遺物として,幾何学文,動物像を刻んだ石製スタンプ印章,牛頭,鳥頭,双斧形の石,骨製の垂飾,護符が盛行した。

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世界大百科事典(旧版)内のハラフ期の言及

【ハラフ文化】より

…遺跡の主体は城壁をめぐらした古代都市グザナGuzanaで,アラム王国の王子カパラの前900年ころの宮殿があった。宮殿跡の調査に関連して深く掘り下げたとき,新型式の多数の彩文土器が出土したことから,のちにハラフ式土器と命名されたが,遺構の詳細は不明で,北部メソポタミア先史文化のなかに,ハッスナ期(―サーマッラー期)―ハラフ期―ウバイド期として位置づけることができたのは,他の遺跡における層位的発掘であった。しかし1960年代に始まった北部メソポタミアの新しい発掘によって,ハッスナ,サーマッラー,ハラフの各文化は,編年的順序というよりも,むしろ分布を異にするもので,ハラフ文化は北部メソポタミアの北辺からシリアに広がっていることが確認されている。…

※「ハラフ期」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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