改訂新版 世界大百科事典 「バラタ族」の意味・わかりやすい解説
バラタ族 (バラタぞく)
Bharata
前期ベーダ時代(前1500ころ-前1000ころ)の有力なアーリヤ人部族。インド亜大陸のパンジャーブ地方の東端,サラスバティー川の流域に拠り,アーリヤ人諸部族や先住民ダーサと争いつつ勢力を伸ばした。〈十王の戦〉で名高いスダース王はこの部族に属する。後期ベーダ時代(前1000ころ-前700から前600ころ)には,他部族と融合しつつガンガー(ガンジス)川上流域に進出した。クル族,パンチャーラ族などはこの系統に属すといわれる。バラタはまた古代インドの伝説的帝王の名でもある。叙事詩《マハーバーラタ》は,この王の子孫であるクル族内部の紛争をテーマとしたもの。バラタ王あるいはバラタ族の名にちなみ,古代からインド亜大陸はバーラタバルシャ(バラタの領土)と呼ばれてきた。
執筆者:山崎 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報