ダーサ
dāsa
インドに進入したアーリヤ人と敵対した先住民。アーリヤ人は前1500年ころからパンジャーブ地方に移住し,この地でダーサ,ダスユと呼ばれる先住民を征服した。当時の模様を伝える《リグ・ベーダ》によると,ダーサ,ダスユは黒い肌をもつ鼻の低い種族で,プル(町)に住み,異様な言語を話し,アーリヤ人の神々を崇拝せず,男根崇拝など奇妙な風習をもっていたという。このプルをインダス文明の都市,ダーサをその都市の住民とみる史家があるが,反対意見もまた多い。先住民の中からアーリヤ人の奴隷となる者が出たため,やがてダーサ(女性はダーシー)という語に〈奴隷〉の意味が加わった。後世の文献では,この語はもっぱら後者の意味に用いられている。
執筆者:山崎 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ダーサ
Dāsa
インドの先住民族名。インド最古の文献『リグ・ベーダ』によると,黒い肌をもち,鼻平たく,ときに城壁にこもってアーリア人を襲う悪魔で,アーリア人の崇拝するインドラ神が武器をふるって征服したとある。そこから,アーリア人のインダス川流域侵入によって征服された先住民と推定されている。ダスユ Dasyuと同意語とされることが多い。なお,先住民からアーリア人の奴隷になる者が出たため,ベーダ時代の後期から,ダーサという語は「奴隷」という普通名詞の意味で用いられるようになった。
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ダーサ
Dāsa
古代インドのパンジャーブ地方にいた先住民。ダシウともいう
『リグ=ヴェーダ』に記述がある。のちのドラヴィダ族の祖先ともいわれるが定説はない。アーリア人の征服を受け,彼らと混血したものもあり,アーリア人にかなり影響を与えたといわれるが,詳細は不明。
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
世界大百科事典(旧版)内のダーサの言及
【アーリヤ人】より
…インドとイランに定住すると,それぞれ先住民と融合して独自の宗教と文化を発達させ,両民族間の相違はいよいよ大きくなった。インドでは,アーリヤ人は先住民を区別して,皮膚の色が黒く鼻が低く,奇妙なことばを話し異なった宗教を信奉する者とし,彼らを〈[ダーサ]〉あるいは〈ダスユ〉とよんだ。次いでアーリヤ人がガンジス流域に進出して先住民との融合が進むと,〈ダーサ〉は奴隷を意味するようになり,アーリヤ人と非アーリヤ人との区別は人種ではなく言語と宗教によることがいっそう明瞭となって,後者はムレーッチャとよばれて蔑視された。…
※「ダーサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」