ホスバッハ覚書(読み)ほすばっはおぼえがき(英語表記)Hoßbach-Niederschrift ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホスバッハ覚書」の意味・わかりやすい解説

ホスバッハ覚書
ほすばっはおぼえがき
Hoßbach-Niederschrift ドイツ語
Hossbach Protocol 英語

ヒトラー総統付国防軍副官ホスバッハ(1894―1980)大佐が作成した1937年11月5日の秘密会談の記録。同日ヒトラーは、総統官邸に国防相ブロンベルク、外相ノイラート、陸軍総司令官フリッチュ、海軍司令長官レーダー、空軍総司令官ゲーリングを招集し、対外政策の長期的目標を詳細に開陳した。記録係として出席したホスバッハは、当日のノートをもとに11月10日この覚書を作成した。覚書は、第二次世界大戦後ニュルンベルクの国際軍事裁判に提出され、ヒトラーその他の対外侵略の企図を明白に示す重要証拠とされた。それだけに覚書の信憑(しんぴょう)性、秘密会談の意義をめぐって激しい論争がなされている。覚書の抄訳は、ホーファーによってなされている(救仁郷繁訳『ナチス・ドキュメント』1960・論争社)。

[吉田輝夫]

『テイラー著、吉田輝夫訳『第二次世界大戦の起源』(1977・中央公論社)』

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世界大百科事典(旧版)内のホスバッハ覚書の言及

【第2次世界大戦】より


[ドイツの東方進出政策]
 ヒトラーは,この時期戦争の危険を冒しても東方への進出を決意しはじめた。1936年8月のヒトラーの〈四ヵ年計画に関する覚書〉,そして37年11月5日総統官邸で開かれた党および軍指導者との秘密会議におけるヒトラーの発言(これは〈ホスバッハ覚書〉として知られている)は,次のことを明らかにしている。第1に,ヒトラーは経済の行詰りを予想しはじめ,その打開のためにも東方に〈生存圏〉を獲得することを検討しはじめたことである。…

※「ホスバッハ覚書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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