改訂新版 世界大百科事典 「中央公論社」の意味・わかりやすい解説
中央公論社 (ちゅうおうこうろんしゃ)
日本の出版社。《中央公論》の発行所の反省社が1914年に改称し,中央公論社となる。16年嶋中雄作主幹の下に《婦人公論》が創刊され,滝田樗陰の《中央公論》とともに知識人を対象とした雑誌社として発展した。
昭和期に入って麻田駒之助に代わって嶋中雄作が社長に就任。昭和10年代にはその自由主義的社風が幾多の発禁事件を招き,その末期には廃業を強いられたが,第2次大戦後直ちに再建された。49年雄作の死後,嶋中鵬二が社長を継いだ。現在,上記2誌のほか《will》(前身は《経営問題》),《マリー・クレール》などがある。《自然》(戦前は《図解科学》),《海》は84年に休刊。出版部門が創設されたのは1929年で,レマルク《西部戦線異状なし》がベストセラーになり,谷崎潤一郎訳《源氏物語》が刊行された。戦後は谷崎の《細雪》《鍵》などを出版したが,昭和30年代半ばの《週刊公論》の失敗を償うため,とくに出版部門に力を入れ,各種の全集もの,文庫,新書にも進出した。61年深沢七郎《風流夢譚》に関連して発生したテロ事件(嶋中事件または風流夢譚事件)は社内にはもちろん,社会に対しても大きな衝撃を与えた。
執筆者:京谷 秀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報