ランサム(Arthur Ransome)(読み)らんさむ(英語表記)Arthur Ransome

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ランサム(Arthur Ransome)
らんさむ
Arthur Ransome
(1884―1967)

イギリスの児童文学作家。評論家として出発し、『エドガー・アラン・ポー』(1910)で好評を得たが『オスカー・ワイルド』(1912)で名誉毀損(きそん)裁判に巻き込まれ、勝訴のすえこの分野を捨てロシアに赴き、昔話を研究、収集し『ピーターおじさんのロシアの昔話』(1916)にまとめた。そのかたわら新聞特派員として、第一次世界大戦、ロシア革命干渉戦争を報道した。1929年、46歳で記者生活をやめ、心の故郷である湖沼地方を舞台にした、帆走、キャンプ、釣りなどの休暇物語『ツバメ号とアマゾン号』を執筆し翌年出版、以後『ツバメの谷』(1931)、『長い冬休み』(1933)、『ツバメ号の伝書バト』(1936、カーネギー賞)、『海へ出るつもりじゃなかった』(1937)など12巻のシリーズで、伝統的冒険精神を現実味ある物語で展開し、子供の文学のリアリズムの発展に新しい方向を示した。

神宮輝夫

『岩田良吉・神宮輝夫訳『アーサー・ランサム全集』全12巻(1967~68・岩波書店)』『神宮輝夫訳『アーサー・ランサム自伝』(1983・白水社)』

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