レービル錯体(読み)レビルサクタイ

化学辞典 第2版 「レービル錯体」の解説

レービル錯体
レビルサクタイ
labile complex

反応活性錯体ともいう.錯体の配位圏内の一つ以上の配位子が,ほかの配位子で置き換わるとき,その錯イオン置換しやすさの程度を錯イオンの活性度(lability)といい,置換がきわめて迅速に行われる錯体を置換活性(labile,レービル)であるという.一方,反応がゆっくりとしか進まないか,あるいはまったく起こらないような錯体を置換不活性(inert,イナート)であるという.たとえば,Crおよび反磁性 Co錯体はイナート錯体であり,二価の第一遷移金属原子のつくる錯体のほとんどは,レービル錯体である.labileという用語は,反応速度に関するもので,平衡状態にある化学種の熱力学的安定度と混同してはならない.熱力学的安定度の高い錯体は,多くの場合,配位子置換反応の速度も小さいが,つねに安定度定数と反応速度との間に相関関係がみられるわけではない.たとえば,[Hg(CN)4]2- の安定度定数は 1042 で非常に大きいが,水溶液中での配位子置換反応は非常にすみやかに進む.また,[Co(NH3)6]3+ は熱力学的には不安定な錯体であるが,速度論的に不活性であるため,酸性溶液中で何週間も変化せずに存在しうる.安定度定数の大きさを決めるのは,原系と生成系の間の自由エネルギー差であるが,反応速度の大小を支配するのは,原系と遷移状態の間の自由エネルギー差である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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