日本大百科全書(ニッポニカ) 「一九八四年」の意味・わかりやすい解説
一九八四年
せんきゅうひゃくはちじゅうよねん
Nineteen Eighty-Four
イギリスの作家ジョージ・オーウェルの長編未来小説。1949年刊。1948年執筆、西暦の下2桁の数字を逆にして『一九八四年』と題した。1984年の世界はオシアニア、ユーラシア、イースタシアの三つの全体主義超大国に分かれ、絶えず戦争を繰り返している。その一つのオシアニアではビッグブラザーを頂点とする党が完全に人民を支配し、テレスクリーンがあらゆる個人生活を監視し、恋愛も禁止され、異端思想が考えられないように語彙(ごい)も制限され、変形されている。この世界に反逆したウィンストン・スミスは拷問(ごうもん)を受け、精神的にも肉体的にも完全に屈服し、ビッグブラザーを愛するようになったのち処刑される。全体主義的な精神風土が悪夢のような無気味さで描かれている現代逆ユートピア小説の傑作である。
[鈴木建三]
『新庄哲夫訳『一九八四年』(ハヤカワ文庫)』