改訂新版 世界大百科事典 「一騎打ち」の意味・わかりやすい解説
一騎打ち (いっきうち)
合戦における基本的かつ究極的な戦闘方式の一つ。集団戦(多数対多数),単騎挺身戦(1対多数)に対し1騎対1騎の戦いをいう。このような戦闘法は多くの軍記物に散見する。戦場に臨むと,下人・所従を伴った騎馬武者はおのれの敵としてふさわしい相手を求めて馬を馳せめぐらせる。よい敵と遭遇するや互いに名乗りをあげ,その門地を口上し,祖先の美を称揚し,時に自己の戦功を陳じる場合もあった。こうした口合戦の後,戦闘に入る。まず互いに弓を射かけることから開始されるが,その際,互いに弓手(ゆんで)(弓を持つ手。左方)にまわり込みながら相手の内甲(ひたいのあたり)に的をしぼる。ここで相手を射落とすことができなければ互いに組打ちとなる。刀をすて両手を張って格闘に及び首級をとる。古来,一騎打ちは功名のさいたるもので,勇士の誉れとされ,ために士卒はおのおの先懸(さきがけ)を志し,抜駆(ぬけがけ)を行う者も多かった。
→合戦
執筆者:関 幸彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報