日本大百科全書(ニッポニカ) 「万象亭」の意味・わかりやすい解説
万象亭
まんぞうてい
(1756―1810)
江戸後期の戯作者(げさくしゃ)、狂歌師。蘭学(らんがく)者森島中良の戯号。森羅万象(しんらまんぞう)、竹杖為軽(たけづえすがる)とも称した。通称甫粲(ほさん)、甫斎。家は代々江戸幕府の奥医師を務めた桂川(かつらがわ)家で、4代目甫周の実弟にあたる。戯作では平賀源内に師事した。蘭学者としても有名で、蘭語辞書『類従紅毛語訳(るいじゅうこうもうごやく)』(蛮語箋(ばんごせん))(1798)を編集し、『紅毛雑話』(1787)、『万国新話』(1789)などを著し、海外の事物を紹介した。1792年(寛政4)、松平定信に仕えるが、数年後に致仕、兄の仕事を助けた。戯作では洒落本(しゃれぼん)『田舎芝居(いなかしばい)』(1787)、黄表紙『夫従以来記(それからいらいき)』(1784)が有名。ほかに『桂林漫録(けいりんまんろく)』『反古籠(ほうぐかご)』などの随筆も多い。文化7年12月4日没。墓所は芝の上行寺(現在神奈川県伊勢原(いせはら)市上粕屋(かすや)に移転)。
[中野三敏]