三井文庫(読み)みついぶんこ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三井文庫」の意味・わかりやすい解説

三井文庫
みついぶんこ

江戸時代の豪商三井家の資料を中心とした社会経済史の研究機関。東京都中野区上高田所在。 1985年5月に,三井家伝来の美術工芸品約 2000点と切手類5万点を収めた別館が開設された。国宝6点を所蔵。代表的なものに,円山応挙の最高傑作の1つ『雪松図』1双と藤原定家筆『熊野御幸記』がある。『雪松図』は紙本淡彩の六曲屏風で,画面には雪を表現する金泥と金砂子が施されており,左隻には雪をかぶった力強い雄松が,右隻には柔らかい曲線で同じく雪をかぶった雌松とが,付立て技法により写実的に描かれている。『熊野御幸記』は建仁1 (1201) 年,後鳥羽上皇の熊野御幸に供奉した際の 10月5日より 27日までの定家直筆の日記で,『明月記』の別記ともいえる。「熊野懐紙」の成立など中世文学研究の貴重な資料となっている。他の4点は短刀無銘正宗 (名物日向正宗) ,同無銘貞宗 (名物徳善院貞宗) ,志野茶碗,銅製船氏王後墓誌。

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