藤原定家の漢文日記。別名《照光記》。原本には19歳に達した治承4年(1180)以降,仁治2年(1241)の死去直前までの分があったが,諸伝本では嘉禎1年(1235)までの56年間分が伝存,自筆本も冷泉家相伝の56巻をはじめ諸所に分蔵されている。日記は有職(ゆうそく)方面の記述にとどまらず,重代の歌人として御子左家(みこひだりけ)を継承,新古今時代を開花させ,晩年古典の書写校勘にはげんだ文学者定家の行動と情念を克明に記録,さらに政治生活,経済生活,家庭生活にも及んでいる。宮廷社会内部の激動する世相人心も描かれ,文学史・伝記研究だけでなく歴史資料としても価値が高い。また随所に苦悩や焦燥を混じえた所感や告白が書きこまれ,それ自体が文学作品としての芸術性をもちえている。刊本に,伝本7種を校合した国書刊行会本があるほか,《訓読明月記》(1977-79)があり,続群書類従完成会による増補改訂本もある。伝定家撰同名の歌書もあるが,別書。
執筆者:近藤 潤一
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藤原定家(ていか)の日記で「照光記」ともいう。現存は、1180年(治承4)の18歳から1235年(嘉禎1)74歳までの56年間の日次(ひなみ)日記。途中欠脱もあるが、原本の多くが冷泉(れいぜい)家時雨(しぐれ)亭文庫に現存する。冷泉家に残る譲状(ゆずりじょう)によると、仁治(にんじ)年間(1240~1243)まで記されたとある。また、『明月記』の引用は嘉禎(かてい)4年の記事まである。時雨亭文庫現蔵は、1192年(建久3)~1233年(天福1)までの54巻(途中欠脱年あり)で、そのほか諸文庫にも伝存する。定家の生活や個性を知る最大の資料であるほか、歌壇の動きや詠歌事情、『新古今集』撰修(せんしゅう)の実状が詳細に記され、晩年に多くの古典書写をしたその実態が知られる。また、鎌倉初期の公家(くげ)の政争や生活、ときには庶民社会の記事を含んでいて注目される。
[有吉 保]
『辻彦三郎著『藤原定家明月記の研究』(1977・吉川弘文館)』
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「照光記」とも。鎌倉前期の歌人藤原定家の日記。1180~1235年(治承4~嘉禎元)が現存するが,没年(1241)まで書かれたらしい。源平内乱期から承久の乱以後までの,政治や歌壇・社会状況,自身の心情などについて詳述した当時の基本史料。自筆本は冷泉(れいぜい)家(時雨亭文庫,国宝,54巻)・東京国立博物館など所蔵。「史料纂集」「訓読明月記」所収。
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