改訂新版 世界大百科事典 「二人の旅人」の意味・わかりやすい解説
二人の旅人 (ふたりのたびびと)
《グリム童話》ではこの題名がつけられているが,またの名を〈真実と偽り〉という話型。二人の兄弟(または仲間)が真実と偽り(または二つの宗教)の価値について争い,道で出会った人間(動物)に仲裁を依頼する。真実の価値を主張したほうが負け,両眼をえぐり取られ,道に放置される。あるとき,動物(悪魔)たちの会話から,自分の視力を治す方法を知り,王女の視力(病気)も治して,大臣になる。のちに悪い兄弟(仲間)に再会する。相手は同じような幸せを望み,動物(悪魔)の会話を盗み聞きするが,失敗して引き裂かれる。この昔話の最古の記録は中国のトリピタカにあり,インド《パンチャタントラ》にもみられる。13,14世紀にはチベット,インド,ペルシア,ヘブライの記録がある。それらのなかから《千夜一夜物語》に入り,南ヨーロッパにもたらされたと考えられる。
執筆者:小澤 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報