日本大百科全書(ニッポニカ) 「二十億の針」の意味・わかりやすい解説
二十億の針
にじゅうおくのはり
Needle
異生物テーマを得意とするハル・クレメントの、犯人捜しのSFミステリー。1950年刊。二隻の宇宙船が南太平洋に墜落する。一隻には探偵が、もう一隻には逃亡犯人が乗っていた。彼らは人間ではなく、高度の知性と感覚をもったゼリー状の半液体生物で、宿主がないと生きていけない。そこで探偵は聡明(そうめい)な少年の体内に寄生し、悪党は別な人間に寄生して、両者の虚々実々の追跡劇が地球上で展開される。20億の人間のなかの1人に潜む犯人をみつけるのは、藁(わら)小屋の中で1本の針を捜すのに匹敵するほどの至難事ではないか! 続編に『一千億の針』(1978)がある。
[厚木 淳]
『井上勇訳『20億の針』(創元推理文庫)』