二次性赤血球増加症

内科学 第10版の解説

二次性赤血球増加症(赤血球系疾患)

概念 【⇨表14-9-2】
 二次性赤血球増加症は原因がさまざまであるが,EPO産生亢進によって赤血球系細胞の過剰増殖をきたした病態と定義できる.さらに代償性と恒常性とに大きく分類される.代償性の場合は低酸素血症によるものがほとんどで,高地在住,高地でのトレーニング,肺性心などの肺疾患,Fallot四徴症などの先天性心疾患,高度肥満やPickwick症候群による低換気症候群が含まれる.低酸素血症によらない機能性低酸素血症には酸素親和性亢進型の異常ヘモグロビン症,過度の喫煙や慢性一酸化炭素中毒などがある.恒常性の場合にはEPO産生を制御する分子(VHL,PHD2,HIF-2αなど)の遺伝子変異に起因するものとEPO産生腫瘍がある.
病態生理
 EPOの産生調節に中心的役割を演じるのが低酸素誘導因子-1(hypoxia-inducible factor-1:HIF-1)転写因子でHIF-1αとHIF-1βからなる.HIF-1αは正常酸素分圧下ではプロリン水酸化酵素(prolyl hydroxylase:PHD)によって402番目と564番目のプロリン残基が水酸化を受け,E3ユビキチンリガーゼ複合体の1つであるVHLと結合することでユビキチン化を受け,プロテアソームで分解される.一方,低酸素分圧下ではPHD活性が低下し,HIF-1αはユビキチン化されずにプロテアソームでの分解を免れる.そのためHIF-1αの発現は維持され,HIF-1βと複合体を形成することによって標的遺伝子の1つであるEPO遺伝子の転写を誘導する(図14-9-18).したがって高地在住,肺疾患,低換気症候群などの低酸素状態ではHIF-1α発現の安定化によりEPO産生が亢進し,赤血球増加をきたす.異常ヘモグロビン症のなかにはヘモグロビンと酸素の親和性が高いために組織で酸素欠乏状態となり,同様の機序でEPO産生が亢進し,赤血球増加症をきたすものもある(Hb Hiroshima,Hb Yakimaなど).さらに腎細胞癌の腫瘍随伴症候群の1つとしてEPO産生過剰による赤血球増加症がみられるが,これにもHIF-1αの発現亢進が関与する.[小松則夫]
■文献
Ang SO, Chen H, et al: Disruption of oxygen homeostasis underlies congenital Chuvash polycythemia. Nat Genet, 32: 614-621, 2002.
Pearson TC, Messinezy M: Idiopathic erythrocytosis, diagnosis and clinical management. Pathol Biol (Paris), 49: 170-177, 2001.
Percy MJ, Furlow PW, et al: A gain-of-function mutation in the HIF2A gene in familial erythrocytosis. N Engl J Med, 358: 162-168, 2008.
Percy MJ Zhao Q, et al: A family with erythrocytosis establishes a role for prolyl hydroxylase domain protein 2 in oxygen homeostasis. Proc Natl Acad Sci USA, 103
: 654-659, 2006.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

六訂版 家庭医学大全科の解説

二次性赤血球増加症
にじせいせっけっきゅうぞうかしょう
Secondary polycythemia
(血液・造血器の病気)

どんな病気か

 二次性赤血球増加症は、何らかの原因に反応して実際に血液中の赤血球総数が増加する状態のことをいいます。表9に示したように、赤血球が腫瘍性に増殖する真性多血症(しんせいたけつしょう)は含まれません。また、脱水症などによる見かけ上の赤血球増加症(相対的赤血球増加症)も含みません。

原因は何か

 ①心臓および肺の疾患による低酸素血症、あるいは過度の喫煙によって赤血球が増加する場合と、②悪性腫瘍(一部の腎がん肝細胞がん、子宮がん、小脳腫瘍など)の組織が赤血球を増やす物質(エリスロポエチン)を産生する場合とがあります。いずれの場合も、血中エリスロポエチン量の増加が認められます。

症状の現れ方

 頭痛、耳鳴りめまい高血圧などがあり、さらに一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)脳梗塞(のうこうそく)心筋梗塞(しんきんこうそく)などの血栓(血管内での血の塊)症状を呈する場合もあります。

検査と診断

 血液検査で赤血球数の増加が認められます。脱水症あるいはストレスが原因となって起こる見かけ上の赤血球増加(相対的赤血球増加症)と区別するために、循環赤血球量の測定を行い、血液中の総赤血球数が真に増加していることを確認します(真性多血症)。

 さらに、心・肺疾患の有無の確認、動脈血酸素飽和度の測定、大量喫煙歴の確認、血中エリスロポエチン量の測定などを順次行います。

 真性多血症の場合と異なり、白血球および血小板数の増加は伴わず、また脾臓(ひぞう)のはれも認めません。エリスロポエチン産生腫瘍が疑われる場合には、腫瘍の検索を併せて行う必要があります。

治療の方法

 心・肺疾患、エリスロポエチン産生腫瘍など、原因となる疾患の治療が主となります。喫煙が原因の場合には、禁煙が重要になります。

永井 正


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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