享楽主義者マリウス(読み)きょうらくしゅぎしゃマリウス(その他表記)Marius the Epicurean

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「享楽主義者マリウス」の意味・わかりやすい解説

享楽主義者マリウス
きょうらくしゅぎしゃマリウス
Marius the Epicurean

イギリスの批評家 W.ペーターの小説。 1885年刊。2世紀なかばのローマを背景に真摯な一青年マリウスの内的発展を描いたもの。エトルリア貴族に生れた主人公はピサで教育を受けたのちローマに出て皇帝マルクス・アウレリウス秘書官となるが,その間に受けた種々の精神的影響──アプレイウスの伝奇小説『黄金ロバ』,ヘラクレイトスの哲学,キュレネ学派アリスチッポスの異教主義,アウレリウスのストア哲学,初期キリスト教など──に対する彼の反応が克明にたどられている。主人公は最後には友人のキリスト者コルネリウスを救おうとする自己犠牲的行為によってみずから熱病に倒れる。全体としてペーターのいわゆる「目的と手段とが一つになっている芸術的生」の雰囲気に貫かれているが,これはマリウスに託したペーターその人の精神遍歴と考えられよう。イギリス小説における異色の名作である。

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