日本大百科全書(ニッポニカ) 「アプレイウス」の意味・わかりやすい解説
アプレイウス
あぷれいうす
Lucius Apuleius
(125ころ―?)
古代ローマの文学者。ヌミディアのマダウラ(またはマダウルス)で町の有力者の家に生まれる。マダウラで初等教育、カルタゴで修辞学、アテネでプラトンの哲学を学ぶ。修学後ギリシアと小アジアを旅し、イシス信仰に傾倒する。しばらくローマで修辞学の教師、弁護士として働いたのち、アフリカに帰り、年上の裕福な寡婦プデンティッラと結婚。この結婚をめぐり、妻の親族から、魔術を用いてプデンティッラを誘惑したとして訴えられたが、得意の弁舌で反論し無罪となる。カルタゴで名をなし、皇帝礼拝の祭司として余生を送る。作品には、青年ルキウスがロバに変身し、さまざまな体験をしたのち女神イシスの力で人間に戻るまでを描いた伝奇小説『変身物語』(または『黄金のロバ』)、結婚をめぐって訴えられたときの反論『弁明』、アプレイウスの名句を集めた『フロリダ』、そのほか『ソクラテスの神』『プラトンとその教え』『世界について』が残っている。その文体は華やかで、古典的な表現と俗語が入り混じっている。作品は当時の人々に広く受け入れられた。
[土岐正策]
『呉茂一・国原吉之助訳『黄金のろば』全2冊(岩波文庫)』