2世紀に活躍したローマの著作家。北アフリカのマダウロスの出身で,初等教育をカルタゴで受け,のちアテナイで哲学や修辞学を学んだ。その後イタリア,ギリシア,アジアなどを広く旅し,その間に神秘宗教や魔術に接する機会があったと考えられる。ローマにもしばらく滞在したが,アレクサンドリアへの旅の途中オエア(トリポリ)の町で熱病にかかり,このとき世話を受けたのがきっかけとなって,友人シキニウス・ポンティアヌスの母親で金持ちの未亡人プデンティラと結婚した。財産が他人の手に渡ることを不満とする彼女の親戚たちは告訴し,彼が魔術を用いて未亡人を手に入れたと主張した。これに対してアプレイウスは法廷で雄弁に自己を弁護し,無罪となった。155年ころのことで,そのときの弁論が《アポロギア(弁明)》の題で残っているが,これはローマ帝政時代の法廷弁論のうち,現存する唯一の例として貴重なものである。その後の経歴はほとんどわからず,没年も不明であるが,カルタゴに住み,文学的な著作をするかたわらアフリカ各地を旅し,哲学者や修辞学者として活躍して市民の尊敬を受けたらしく,カルタゴと故郷のマダウロスの両市に彼の彫像が建てられたと伝えられる。アフリカでの多くの演説の中から抜粋した《フロリダ(名句集)》は4巻にまとめられて残っており,その他の作品としては《プラトンの教説について》および《ソクラテスの神について》と題する哲学的な著述があり,アリストテレスの作と誤って伝えられてきた《宇宙論》のギリシア語からラテン語への翻訳もあるが,主としてプラトン哲学の影響を示すこれらの作品は,思想的にもあまり重要視されていない。それよりもアプレイウスの名を有名にしているのは,魂の遍歴を描いたきわめて異色の小説で,一種の教養小説とも解せる《黄金のろば》であり,これによって後世の文学に大きな影響を及ぼしている。
執筆者:引地 正俊
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古代ローマの文学者。ヌミディアのマダウラ(またはマダウルス)で町の有力者の家に生まれる。マダウラで初等教育、カルタゴで修辞学、アテネでプラトンの哲学を学ぶ。修学後ギリシアと小アジアを旅し、イシス信仰に傾倒する。しばらくローマで修辞学の教師、弁護士として働いたのち、アフリカに帰り、年上の裕福な寡婦プデンティッラと結婚。この結婚をめぐり、妻の親族から、魔術を用いてプデンティッラを誘惑したとして訴えられたが、得意の弁舌で反論し無罪となる。カルタゴで名をなし、皇帝礼拝の祭司として余生を送る。作品には、青年ルキウスがロバに変身し、さまざまな体験をしたのち女神イシスの力で人間に戻るまでを描いた伝奇小説『変身物語』(または『黄金のロバ』)、結婚をめぐって訴えられたときの反論『弁明』、アプレイウスの名句を集めた『フロリダ』、そのほか『ソクラテスの神』『プラトンとその教え』『世界について』が残っている。その文体は華やかで、古典的な表現と俗語が入り混じっている。作品は当時の人々に広く受け入れられた。
[土岐正策]
『呉茂一・国原吉之助訳『黄金のろば』全2冊(岩波文庫)』
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125頃~?
古代ローマの文学者。北アフリカ出身。その作品『黄金のロバ』はラテン文学史上完全に現存する唯一の長編小説で,当時の宗教,風俗などを知る好史料である。他に『弁明』などの著作がある。
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…ほかにウェレイウス・パテルクルスVelleius Paterculus,クルティウス・ルフスCurtius Rufus,フロルスなどの歴史家の名がみられる。またそのほかの散文作家には,小説《サテュリコン》の作者ペトロニウス,百科全書《博物誌》の著者の大プリニウス,《書簡集》を残した雄弁家の小プリニウス,農学書を残したコルメラ,2世紀に入って,《皇帝伝》と《名士伝》を著した伝記作家スエトニウス,哲学者で小説《黄金のろば(転身物語)》の作者アプレイウス,《アッティカ夜話》の著者ゲリウスなどがいる。 詩の分野ではセネカの悲劇のほかに,叙事詩ではルカヌスの《内乱(ファルサリア)》,シリウス・イタリクスの《プニカ》,ウァレリウス・フラックスの《アルゴナウティカ》,スタティウスの《テバイス》と《アキレイス》など,叙事詩以外ではマニリウスの教訓詩《天文譜》,ファエドルスの《寓話》,カルプルニウスCalpurniusの《牧歌》,マルティアリスの《エピグランマ》,それにペルシウスとユウェナリスそれぞれの《風刺詩》などがみられる。…
※「アプレイウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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