マリウス(読み)まりうす(英語表記)Gaius Marius

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マリウス」の意味・わかりやすい解説

マリウス
Marius, Gaius

[生]前157頃.アルピヌム
[没]前86.1.13. ローマ
共和政末期のローマの将軍。閉鎖的貴族支配階級のなかにプレプス (平民) 出身者として割込むことに成功し,新興騎士階級 (エクイテス ) の代表として閥族派 (オプチマテス ) と対決した新しい型の政治家。7度執政官 (コンスル ) をつとめた (前 107,前 104~100,前 86) 。スキピオ・アエミリアヌス (小スキピオ) に従いヌマンチア攻略に参加。前 107年ヌミディア王ユグルタを破った。このとき無産市民を徴募,訓練したが,この軍制改革は有力者による私兵養成を意味し,以後ポンペイウス (大ポンペイウス) ,ユリウス・カエサルらに引継がれた。前 104~101年ゲルマン人を制圧。前 90年以後同盟市戦争に参加。後輩の閥族派 L.スラと対立し,前 88年スラに追われてアフリカに逃れ,L.キンナと結んで翌年スラが東方におもむいている留守中,ローマに帰還。同盟市にローマ市民権を与え,スラ派に対して激しい粛清を行なった。前 86年7度目の執政官となったが,復讐におびえつつ病死した。

マリウス
Marius

フランス劇作家 M.パニョール戯曲。4幕。 1929年初演。作者故郷に近いマルセイユの一軒のバーを舞台に,そこに集る素朴で純情な人々の生活を,方言笑いを巧みに用い,郷土色豊かに描き出している。マリウス帰郷主題とする『ファニー』 (1931) ,その父の死を中心とする『セザール』 (36) を加えてマルセイユ三部作が完成し,映画化も成功して,第1,2次両世界大戦間の風俗喜劇の代表作となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリウス」の意味・わかりやすい解説

マリウス
まりうす
Gaius Marius
(前157ころ―前86)

古代ローマの政治家。アルピヌムArpinum近郊の騎士身分の出身。名門メテルルス家との縁で政界に進出。ユグルタ戦争(前111~前105)に副官として従軍し、属州アフリカの実業家層の支持を得てコンスル職に立候補し、当選(前107)。プロレタリー(無産市民)層からの募兵制による新軍を使ってこの戦争に勝利を収め、凱旋(がいせん)(前104)した。続いてキンブリ・テウトニ人の撃退にも成功し、民衆派の領袖(りょうしゅう)として絶大な権力を確立するに至った。紀元前100年に六度目のコンスル職についたが、彼の退役兵の植民問題などをめぐってノビレス(顕職貴族)との関係が険悪化した。他方、植民問題での協力者である護民官サトゥルニヌスの民衆派的改革遂行に対して、これを弾圧した。同盟市戦争(前91~前87)期に入ると、閥族派でありながら彼と同様になかば私兵的な軍事的クリエンテーラを基盤とするスラからの深刻な挑戦を受けた。両者はミトリダテス戦争の指揮権をめぐって争い、マリウスはいったんこれを手中にしたが、東方から急遽(きゅうきょ)帰還したスラのローマ進軍により敗走。退役兵の植民先の一つであるアフリカに逃れて勢力を蓄え、キンナの台頭を機にローマに帰還。キンナとともに前86年のコンスルとなり、反対派の大弾圧を行ったが、同年病死した。なお、妻ユリアはカエサルの父の姉妹である。

[栗田伸子]

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