伊勢船(読み)いせぶね

精選版 日本国語大辞典 「伊勢船」の意味・読み・例文・類語

いせ‐ぶね【伊勢船】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 中世末期から近世中期にかけて伊勢地方を中心に造られた船型。船首を箱形の戸立(とだて)造りにしたのが特徴で、安宅船や大型荷船として重用された。近世中期以後は帆走性能と経済性の点で二成(ふたなり)船や弁才(べざい)船に及ばず、ほとんど姿を消したため、二成船がこれと混同されるようになった。伊勢造り。
    1. 伊勢船<b>①</b>〈伊勢船造安宅図より〉
      伊勢船〈伊勢船造安宅図より〉
    2. [初出の実例]「しほむかふをのの湊の流れ江になほ漕ぎかねてとまるいせ船〈藤原光俊〉」(出典:新撰六帖題和歌(1244頃)三)
  3. 江戸時代末から明治にかけて知多半島伊勢湾沿いの野間内海常滑等に多かった買積船、内海船(うつみぶね)の別称。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の伊勢船の言及

【和船】より

…現存史料による限り,〈百済船(くだらぶね)〉〈唐船(からふね)〉〈宋船〉〈暹羅船(シヤムせん)〉〈南蛮船〉などの対語としての〈倭船〉ないし〈和船〉なる文字は,少なくとも幕末前には見当たらない。では,日本の船のことは何と記しているかというと,〈遣唐使船〉〈遣明船〉〈朱印船〉〈安宅船(あたけぶね)〉,〈関船(せきぶね)〉(のち船型呼称となる),〈御座船〉〈荷船〉〈樽廻船〉〈くらわんか舟〉など用途による名称,〈茶屋船〉〈末吉船〉〈末次船〉〈荒木船〉など所有者名を冠するもの,〈伊勢船〉〈北国船(ほつこくぶね)〉〈北前船(きたまえぶね)〉〈高瀬舟〉など,地名を冠してはいるが実は船型を表すもの,〈二形船(ふたなりぶね)〉,〈ベザイ船〉(弁財船とも書かれる),〈菱垣廻船〉〈早船(小型のものは小早(こばや))〉など船型や艤装(ぎそう)を指す呼称,〈千石船〉(ベザイ船の俗称),〈三十石船〉など本来船の大きさ(積石数(つみこくすう)。現用の載貨重量トン)を表した呼称が船型名称のごとく使われるようになったものなど,個々の船種船型名称が記されているのが一般である。…

※「伊勢船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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