愛知県知多半島中部西岸にある市。1954年(昭和29)常滑、鬼崎(おにざき)、西浦、大野の4町と三和(みわ)村が合併して市制施行。名古屋鉄道常滑線・空港線、国道155号、247号、セントレアライン(知多横断道路・中部国際空港連絡道路)が通じる。地形は第三紀新層の丘陵地がおもで、西方の海岸線に沿って沖積低地がある。常滑は窯業の町で瀬戸、越前(えちぜん)、信楽(しがらき)、丹波(たんば)、備前(びぜん)などとともに古窯の一つに数えられる。その歴史は古く平安末期にまでさかのぼり、半島全域に広がる常滑古窯址(こようし)群の中心地。現在は瀬戸市と並ぶ陶磁器産地で、とくに陶管、植木鉢は日本有数の生産高を誇り、朱泥(茶器)、白泥の工芸品は独特の趣(おもむき)がある。北西部の大野は江戸時代、廻船(かいせん)業者の本拠港であった。廻船問屋を営んだ瀧田家が公開されている。とこなめ陶の森の資料館にある陶器の生産用具および製品1655点と登窯(のぼりがま)1基は国の重要有形民俗文化財に指定されている。隣接して陶芸研究所があり、平安・鎌倉時代の古常滑を陳列している。斎年寺(さいねんじ)の雪舟の「慧可断臂図(えかだんぴず)」は国宝。なお、沖合いでは2002年(平成14)空港島が完成、2005年に中部国際空港「セントレア」が開港している。面積55.90平方キロメートル、人口5万8710(2020)。
[伊藤郷平]
『『常滑市誌』全5巻(1974~1983・常滑市)』
愛知県西部,知多半島の西岸中央部にあって伊勢湾に面する窯業都市。1954年常滑,鬼崎,西浦,大野の4町と三和村が合体,市制。人口5万4858(2010)。長い常滑焼の歴史を物語る常滑古窯跡群が丘陵部にあり,陶器生産用具および製品1655点が国の重要民俗資料に指定されている。近世後期に朱泥,陶管が特産として登場し,その後,衛生陶器,タイル,置物玩具なども生産され,窯業が市の中心産業となっており,市立陶芸研究所,県窯業技術センター(現,愛知県産業技術研究所常滑窯業技術センター),陶磁器会館がある。窯業と並んで栄えた伝統産業として酒造を中心とした食料品製造業,知多木綿の生産をもとに発展した繊維工業がある。市北端の大野は中世以来の港町で,近世には廻船問屋があり,酒,木綿などを積み出した。東部の丘陵地には愛知用水が走り,それを利用した米作,野菜・果樹・花卉栽培が行われる。伊勢湾内有数の漁業地でもあり,近年は特にノリの養殖が盛ん。名鉄常滑線,国道247号線が通じ,名古屋との交通の便がよいため通勤者も多い。常滑競艇場や坂井温泉がある。2005年に市の沖合に中部国際空港が開港し,常滑駅からの名鉄空港線も開業した。
執筆者:溝口 常俊
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… 産業面では,中世における最大の窯業地の中心が尾張であった。瀬戸では美濃とともに当時唯一の施釉陶器の産地として宗教用具や高級日用具を,常滑(とこなめ)では無釉の日用具を産した。現在瀬戸では500以上,常滑では1300以上の中世窯跡が確認されており,その製品は全国的に市場をもっていたことが,各地の発掘調査から知られている。…
※「常滑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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