…航空機発達の初期のころは,飛行の高度や速度も高くなかったので,医学的に問題とされる生理的ストレスも多くはなかったが,現在のように超高速・超高空飛行が行われるようになると,環境変化にともなうストレスの影響は無視できなくなった。急激な気圧の減少によって起こる減圧症(気圧性中耳炎や副鼻腔炎,関節痛を起こすベンズbendsや胸痛を起こすチョークchokes,気圧性歯痛など)や酸素欠乏によって起こる急性低酸素症(高度約3000m以上で呼吸循環機能亢進,4500m以上で循環不全や中枢神経障害,6000m以上で意識喪失などをきたす)に対する医学的対策が必須となり,航空医学は,第2次大戦中の航空戦略の転換を契機として飛躍的に進歩した。今日,民間航空が与圧室機構をはじめとする各種安全装置を装備した超大型機を用いて,死の世界ともいうべき成層圏を超高速で飛行し,多数の人員を安全に輸送する交通機関の役目を果たしているのは,航空医学の成果に負うところがきわめて大きい。…
…臓器,組織,細胞が正常な機能を営むのに必要な酸素の供給や消費が障害された状態で,低酸素症ともいう。組織代謝に必要な酸素の供給が停止した状態をアノキシアanoxiaまたは無酸素症といい,しばしばハイポキシアと同じ意味に用いられるが,厳密には生体ではアノキシアは存在しない。…
※「低酸素症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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