ハイポキシア(その他表記)hypoxia

翻訳|hypoxia

デジタル大辞泉 「ハイポキシア」の意味・読み・例文・類語

ハイポキシア(hypoxia)

低酸素症

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ハイポキシア」の意味・わかりやすい解説

ハイポキシア
hypoxia

臓器組織,細胞が正常な機能を営むのに必要な酸素の供給や消費が障害された状態で,低酸素症ともいう。組織代謝に必要な酸素の供給が停止した状態をアノキシアanoxiaまたは無酸素症といい,しばしばハイポキシアと同じ意味に用いられるが,厳密には生体ではアノキシアは存在しない。ハイポキシアは原因に応じて次のように区別される。(1)低酸素性低酸素症 血液への酸素供給が不足する状態で,外気の酸素分圧低下(たとえば高所),呼吸運動の抑制または停止(呼吸筋麻痺,呼吸中枢麻痺,胸部への加圧など),呼吸運動はあるが肺胞換気を欠く場合(水や異物による気道通過障害,肺胞が液体で満たされた場合(肺水腫),気胸など),肺胞と血液間のガス交換の障害(肺毛細血管の血流低下または拡散障害)などのいろいろな原因で起こる。(2)貧血性低酸素症 血液の酸素容量の低下した場合。原因には,赤血球数の減少(出血,骨髄障害やビタミンB12欠乏による赤血球の新生機能の低下,赤血球の破壊が異常に強まるときなど),赤血球数は変化しないがヘモグロビン量が減少する場合(鉄分の不足),ヘモグロビンの形成の異常(たとえば鎌状赤血球症),ヘモグロビンの酸素結合能の低下(一酸化炭素中毒,メトヘモグロビン血症)などがある。(3)阻血性低酸素症 毛細血管の血液減少によるハイポキシアで,血圧の低下(心臓の機能障害や激しい失血など),局所性循環障害(塞栓(そくせん)症,血栓症による血管狭窄や身体の一部分が締めつけられる場合など)で起こる。(4)酸素の拡散距離の延長による低酸素症 毛細血管を伴わずに組織の増殖が起こり,毛細血管から周囲の組織への酸素拡散が及ばない部分で起こる。(5)組織中毒性低酸素症 細胞への酸素供給はあるが,細胞内の酸素存在下に活動する代謝過程が酸素を利用できない状態をいう。たとえば青酸はチトクロム酸化酵素活性を阻害して細胞内の栄養素と酸素との反応を阻止する。

 低酸素症の影響は臓器,組織の種類により異なるが,脳が最も鋭敏で全身性低酸素症の場合,15秒後には意識喪失が起こり,3分以上続くと回復不能な脳組織の形態変化が起こる。
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