国指定史跡ガイド 「佐多旧薬園」の解説
さたきゅうやくえん【佐多旧薬園】
鹿児島県肝属(きもつき)郡南大隅町佐多伊座敷にある薬園。九州本土最南端に所在する植物園跡で、薩摩藩の薬園として熱帯性植物を栽培した貴重な遺跡として、1932年(昭和7)に国の史跡に指定。薬園の設立は不明だが、1687年(貞享4)、島津藩家老、新納時升(にいろときます)が中国原産の常緑樹リュウガンを藩主に献上するため、佐多伊座敷村に植えたのが始まりとされる。宝暦年間(1751~64年)のころ薬園として創建され、島津氏第25代島津重豪(しげひで)が薬園の経営に努めた。琉球経由で輸入した南方の植物を中心に、園内にはリュウガンのほかにレイシ、アカテツ、オオバゴムノキなど多くの熱帯植物が植えられ、南洋や東シナ方面からはおもに薬草を輸入し、幕末まで医学の研究が試みられた。薩摩藩にはここ以外にも、最初にできた山川薬園、鹿児島城に近い吉野薬園があり、これらの3ヵ所の薬園を「三薬園」と呼んでいたが、明治維新の廃藩置県でいずれも廃止された。現在は園内が開放されている。垂水港から車で約1時間10分。