アカテツ(その他表記)Planchonella obovata (R.Br.) Pierre

改訂新版 世界大百科事典 「アカテツ」の意味・わかりやすい解説

アカテツ
Planchonella obovata (R.Br.) Pierre

東南アジアを中心として熱帯域に広く分布するアカテツ科の常緑高木で,高さ15m,直径50cmに達する。小枝,葉の裏,花序に赤褐色の絹毛を密生する。革質の葉は互生し,楕円形または長楕円形でやや輪生するむきがあり,先端は円形またはつぶれ,長さ5~10cm,裏面ははじめ毛を密生するが後には無毛となる。花は葉腋ようえき)に1~4個を束生する。花冠は鐘形で長さ3~4mm,白色,裂片は5枚。萼片は5枚。おしべは5本。果実は倒卵状球形液果で,長さ1~1.5cm,紫黒色に熟し,中に1個の種子を含む。小笠原奄美大島琉球,台湾,南中国からインド,マレーシアミクロネシアに広く分布する。材は赤色をおび,堅くて良質で家具などに用いられる。また防風林にもされる。

 アカテツ科Sapotaceaeは40属600種ほどの樹木からなり,主として熱帯に分布する。果樹として,あるいはグッタペルカや植物油脂の生産に関して重要なものがある。また,巨大な高木にはならないが,材として良質なものが多く,よく利用される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アカテツ」の意味・わかりやすい解説

アカテツ(赤鉄)
アカテツ
Pouteria obovata

アカテツ科の大型高木。アジア熱帯に広く分布し,日本では琉球列島小笠原諸島に自生する。樹高 10~20m。材は非常に硬く,傷つけると褐色樹脂を出し,「赤鉄」の名はこの硬さと樹脂の色に基づくといわれる。樹皮は黒褐色。葉は互生し長卵形で長さ8~10cm,枝先に密に集る。葉の質は革質で硬く,表面は濃緑色で裏面には赤錆色の毛を密生する。夏,枝先の葉腋に黄緑色,5弁の小花をやや密につける。果実は黒褐色,球形で径5~6mm。小笠原諸島の乾燥地には葉がはるかに小型の変種コバノアカテツ P.obovata var. dubiaが優占種となっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカテツ」の意味・わかりやすい解説

アカテツ
あかてつ
[学] Planchonella obovata (R.Br.) Pierre

アカテツ科(APG分類:アカテツ科)の常緑高木。樹皮は黒褐色で樹脂を分泌するので、クロテツともいう。葉は互生し、楕円(だえん)形または倒卵形、長さ5~10センチメートルで全縁。厚い革質で裏面に茶褐色の毛が多い。6月に小さい白色花が開き、果実は楕円形で9月に黒紫色に熟し、光沢がある。小笠原(おがさわら)諸島、沖縄、吐噶喇(とから)列島、中国南部からインド、マレーシア、ミクロネシア、ポリネシアにかけての海岸の林内に分布し、防風、防潮用に植える。

[小林義雄 2021年3月22日]

 アカテツ科SapotaceaeはAPG分類でもアカテツ科とされる。アメリカ、アフリカ、アジアの熱帯を中心に54属1300種ほどが分布する。樹脂や果実が利用されるものもある。日本には1属2種が自生する。

[編集部 2021年3月22日]

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百科事典マイペディア 「アカテツ」の意味・わかりやすい解説

アカテツ

アカテツ科の常緑高木。小笠原,南西諸島,東南アジアの熱帯に広く分布する。高さ15m,直径50cmに達し,小枝や葉裏などには赤褐色の毛を密生する。葉はかたく,楕円形で長さ5〜9cm。花は白色で径5〜6mm,果実は液果。材は赤色を帯び,堅く良質で,家具に用いられる。防風林にもされる。

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