南洋(読み)ナンヨウ

デジタル大辞泉 「南洋」の意味・読み・例文・類語

なん‐よう〔‐ヤウ〕【南洋】

日本南方、特に太平洋赤道付近の海洋とその洋上にある島々総称。第二次大戦後はほとんど用いられない呼称
末の中国で、江蘇省以南の沿海諸省の総称。
[類語]北洋

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精選版 日本国語大辞典 「南洋」の意味・読み・例文・類語

なん‐よう‥ヤウ【南洋】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 太平洋の熱帯海域
  3. 日本の南方にあたる熱帯の海洋と島々の総称。第二次世界大戦前、日本の委任統治領であったミクロネシアの島々およびフィリピン・インドネシア諸島などをいった。
    1. [初出の実例]「瑪利亜安那諸島〈略〉諳厄利亜の安嵩南洋に航し、此に到るときは、居人なかりしと」(出典:輿地誌略(1826)八)
  4. 中国南方の海洋。最初は南海とほぼ同じ意味で用いられたが、この海域の重要性が認識されるとともに、清初に正式に南洋の名が定められた。南シナ海・東南アジア沿岸の地域を総称。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「南洋」の意味・わかりやすい解説

南洋
なんよう

日本では南方のとくに熱帯海域を一般に南洋と総称したが、とくに第一次世界大戦後、国際連盟から統治を委任された旧ドイツ領のマリアナ諸島カロリン諸島マーシャル諸島南洋諸島と称したので、この海域をさして南洋とよぶことが多かった。一方、フィリピン、スラウェシボルネオからジャワスマトラにかけてのインドネシアまでを表南洋、外南洋とよぶこともあり、これと区別して前記の委任統治領の南洋諸島を裏南洋とか内南洋ともいった。なお中国では揚子江(ようすこう)以南の海岸地方を南洋とよんだというが、時代によってその呼称の指示する地域は変化していて限定することはできない。日本でもこの呼称は昭和初期には盛んに用いられたが、戦後にはほとんど使用されなくなった。

[大島襄二]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「南洋」の解説

南洋(なんよう)

中国で東南アジアをさした名称。古くは南海と呼ばれた東南アジアと中国との交流は,10世紀以降盛んになり,とりわけ明・清代以降活性化した。こうしたなかで清代の18世紀になると,東南アジアは南洋と呼ばれるようになった。日本人もこの語を受容し,第二次世界大戦期まで一般に用いた。

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百科事典マイペディア 「南洋」の意味・わかりやすい解説

南洋【なんよう】

この語はいろいろな意に用いられるが,日本では第1次大戦後の日本委任統治領南洋群島(グアムを除く)とインドネシアに属するマレー諸島,フィリピン諸島などを総称する名称で,旧南洋群島を裏南洋,マレー諸島を表南洋と区別して用いることもあった。しかし,現在ではあまり用いられない。

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旺文社世界史事典 三訂版 「南洋」の解説

南洋
なんよう

清末期,江蘇省以南の諸省の総称で,河北・山東・奉天の3省を北洋と呼んだことに対する言葉
それぞれ担当大臣を置いて外交・防衛・通商などにあたらせた。なお日本では第二次世界大戦まで,東南アジア地域をさした。

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世界大百科事典(旧版)内の南洋の言及

【東南アジア】より

…西からミャンマー,タイ,ラオス,カンボジア,ベトナムの5ヵ国が東南アジアの大陸部を形成し,マレーシア,シンガポール,インドネシア,ブルネイ,フィリピンの5ヵ国が東南アジアの島嶼部を形づくっている。かつて〈南洋〉ないし〈南方〉と称していた地域を,〈東南アジア〉と呼ぶようになったのは比較的新しく,太平洋戦争後のことである。〈東南アジア〉(あるいは〈東南アジヤ〉)という語自体は,1930年代の末ころから,一部の研究者の間で用いられたことがあるが,一般には普及しなかった。…

【南海】より

…秦の始皇帝のとき前214年に南方を征服し,今日の広州に南海郡をおいたのは,そこが南海への連絡口だったからである。のちには南シナ海の南部からインド洋にわたる海域を南洋と称し,広州または泉州(福建省)から南に伸ばした一線によってこれを東西に分け,東洋,西洋といった。【日比野 丈夫】。…

※「南洋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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