何ら(読み)イズラ

デジタル大辞泉 「何ら」の意味・読み・例文・類語

いず‐ら〔いづ‐〕【何ら】

[代]
不定称の指示代名詞。どこ。どこいら。いずこ。
石田野いはたのに宿りする君家人の―と我を問はばいかに言はむ」〈・三六八九〉
(感動詞的に用いて)相手を促したり、問いかけたりするときに用いる語。さあさあ。
「―今日の菖蒲さうぶはなどか遅うはつかうまつる」〈かげろふ・下〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「何ら」の意味・読み・例文・類語

いず‐ら いづ‥【何ら】

〘代名〙 (「ら」は漠然とした空間をさす接尾語) 不定称。
所在を問うのに用いる。どこ。どこいら辺。
万葉(8C後)一五・三六八九「いはた野に宿りする君家人の伊豆良(イヅラ)とわれを問はばいかに言はむ」
② 催促するのに用いる。さあさあ。どうした。
蜻蛉(974頃)上「『まだ魚(いを)なども食はず、今宵なんおはせばもろともにとてある。いづら』など言ひてもの参らせたり」
③ (多く「いずらは」の形で) 反語で、所在を否定するのに用いる。どこにもない。
古今(905‐914)雑体・一〇一五「むつごともまだ尽きなくに明けぬめりいづらは秋の長してふ夜は〈凡河内躬恒〉」
[語誌]「いづこ」「いづち」「いづれ」よりも、もっと漠然とした表現に用いる。「どこにいるか(行くか)」という所在そのものを問う本来の用法から、はやくその姿を見せなさいといった促しの心情を伴った呼び掛けにも用いられた。

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