改訂新版 世界大百科事典 「保型関数」の意味・わかりやすい解説
保型関数 (ほけいかんすう)
automorphic function
平面領域Dを不変にする一次分数変換を元とする群Gがあり,Dを定義域とする有理型関数fで,Gに属する変換を独立変数にほどこしても値の変わらないもの,すなわち,が成り立つようなものを保型関数という。三角関数のような周期関数,楕円関数のような二重周期関数の一般化である。保型関数の概念はH.J.ポアンカレが導入し,代数関数論や微分方程式論に応用して大きな成果をあげた。
fが非定数であるためには,Gはつぎの性質をもっていなければならない。すなわち,任意の点z∈Dに対して,集合{r(z)|r∈G}はDに集積点をもたない。この性質のあるG(一次分数変換を元とする)をクライン群Klein groupといい,とくにDが円板または半平面のときフックス群Fuchs groupという。fはリーマン面D/Gの上の有理型関数であり,また逆も正しい。
保型関数には整数論的に重要な側面があり,この立場からの研究も重要である。
執筆者:及川 廣太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報