複素平面上の有限な領域で一価の複素関係 f(u) が極以外には特異点をもたず,極を除くすべての点で微分可能であって,u について常に f(u)=f(u+ω1) ,f(u)=f(u+ω2) の成り立つような2つの複素数 ω1 ,ω2 (これらの商は実数でない) をもつとき,この f(u) を広義の楕円関数という。上の関係式からも明らかなように,ω1 ,ω2 はそれぞれ周期を示している。すなわち,楕円関数とは ω1 ,ω2 を基本周期とする一価の正則な二重周期関数の総称である。楕円関数を微分して得られる関数,あるいは同じ基本周期をもついくつかの楕円関数の間に加減乗除の演算を施して得られる関数も楕円関数となる。 K.ワイエルシュトラスは
(ペー) 関数,ζ 関数,σ 関数という3つの楕円関数 (ワイエルシュトラスの楕円関数) を定義したが,任意の楕円関数はこのワイエルシュトラスの関数によって表わすことができる。また K.ヤコービは楕円積分の第1種ルジャンドル=ヤコービの標準形の逆関数として sn ,cn ,dn の3つの楕円関数を定義した。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
一般には,有限複素平面上に極(複素平面のある領域で定義された複素数値関数f(z)が,その領域内の1点cのまわりでcだけを除き(式1)で表されるとき,cをf(z)の(k次の)極という)以外の特異点をもたない一価解析関数(関数論)で,二重周期関数であるもの。二重周期関数f(z)とは,基本周期となる二つの複素数ω1,ω2(ω1/ω2は実数でない)があって,任意の整数m,nと複素数zに対しf(z+mω1+nω2)=f(z)となるものをいう。ワイヤーシュトラスが定義したペー関数,ヤコビが定義したsn関数(第1種の楕円積分の逆関数)など種々の形がある。→楕円/楕円面
→関連項目アーベル|エルミート|ヤコビ|ルジャンドル
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
複素平面Cで有理型な二重周期関数の別名である。すなわち,ω1とω2を,0と異なる複素数でIm(ω1/ω2)>0を満たすものとしたとき,Cで有理型な関数fで,任意のz∈Cと,任意の整数m,nに対して, f(z+2mω1+2nω2)=f(z)を満たすものを,2ω1と2ω2を基本周期とする楕円関数という(ω1,ω2を採らず2ω1,2ω2を用いるのは,種々の利点があり,慣用となっている)。4点0,2ω1,2ω2,2ω1+2ω2を頂点とする平行四辺形を基本周期平行四辺形という。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報