先天性胆道拡張症
せんてんせいたんどうかくちょうしょう
Congenital biliary dilation
(子どもの病気)
胆汁を排泄する胆管の一部が紡錘(糸をつむぐ用具)や袋の形に拡張し、腹痛、嘔吐、発熱を繰り返す病気です(図21)。腹部の腫瘤や黄疸で気づくこともあります。
先天的異常と、出生後に生じた可能性のものがあります。後者の場合は、膵管と胆管の合流異常が原因と考えられています。
正常な状態では、膵管と胆管は十二指腸の壁内で合流し、オッジ筋と呼ばれる括約筋によって内容物は逆流しないようになっています。ところが、膵胆管合流に異常があると、膵液と胆汁の逆流防止ができず、膵液が胆管に流入します。膵液は胆汁と出合うと活性化し、膵(蛋白分解)酵素が総胆管上皮や胆道壁に障害を与え、嚢胞を形成すると考えられます。
反復性の腹痛、嘔吐、発熱が現れます。とくに腹痛は、テンプラなどの脂肪を多く含んだ食事のあとに多くみられます。これは、膵液の分泌が増して胆管炎や膵炎を合併し、それが悪化したためと考えられます。そのため、脂っこい食事を好まないようになったり、食事そのものをひかえるようになる場合もあります。
症状が長期にわたると、胆道の拡張が増強して腹部腫瘤ができたり、胆汁の排泄が悪くなって黄疸が現れることもあります。
発熱と食後の腹痛、嘔吐を繰り返す場合は、胆道拡張症も含めて検査を進めます。血液検査で胆道系酵素(ALPなど)や膵酵素(アミラーゼなど)の上昇を確認します。また、胆管炎を合併すると、白血球や炎症性物質(CRPなど)も上昇してきます。
画像診断では超音波検査が有用で、嚢腫状や紡錘状に拡張した胆管を確認できます。さらに、MRIを用いた検査などで膵胆管合流異常を確認し、手術の方法を決定します。
膵胆管合流異常が原因と考えられることから、外科的手術が必要になります。拡張部の胆管を切除し、肝内胆管と空腸の吻合術を行います。
食後の腹痛、嘔吐、発熱を繰り返す場合は、小児科医に相談してください。先天性胆道拡張症が疑われたら、血液検査などを進めていく必要があります。
大塚 宜一
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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家庭医学館
「先天性胆道拡張症」の解説
せんてんせいたんどうかくちょうしょう【先天性胆道拡張症 Congenital Biliary Dilatation】
[どんな病気か]
胆道の一部が生まれつき円柱や袋(ふくろ)のように拡張している病気です。略称をCBDといいます。
通常、強力なたんぱく融解酵素(ゆうかいこうそ)が出てくる膵管(すいかん)と胆汁(たんじゅう)の流れてくる胆道は、十二指腸(じゅうにしちょう)に入る直前まで分離していますが、この病気では膵管と胆管が手前で合流しているため(合流異常)、膵液(すいえき)と胆汁が混合して、胆道や膵臓に逆流するため、膵炎(すいえん)や胆石(たんせき)、胆管がん・胆嚢(たんのう)がんが発生する危険が高くなります。東洋人で女性に多い病気です。
[症状]
腹痛、黄疸(おうだん)、発熱や腹部腫瘤(ふくぶしゅりゅう)で発見されることが多いのですが、合流異常が注目されるようになって、腹痛だけや無症状で、CTや腹部超音波検査の際に偶然、発見されるケースが増えています。
[治療]
合流異常をもった総胆管(そうたんかん)を残すと、後から胆管がんが発生する危険が高いので、肝外胆管(かんがいたんかん)を切除する手術が行なわれます。
手術には、肝門部と空腸(くうちょう)をつなぐ肝管空腸吻合術(かんかんくうちょうふんごうじゅつ)、肝門部と十二指腸とをつなぐ肝管十二指腸吻合術などがあります。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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