朝日日本歴史人物事典 「児島如水」の解説
児島如水
江戸後期の農業に大きな影響をおよぼした農書『農稼業事』(1793~1818)の著者。『農稼業事』は上巻,上巻付録,付録,中巻,中巻付録からなり,如水は上巻と上巻付録の著者獣あり,それ以外は如水の孫徳重の著。上巻自序には「湖東(滋賀県湖東地方)八十六翁児島如水書」とあり,付録には「湖東児島徳重於大坂今宮新家(大阪市西成区)薬店記之」と記されているが,両人の出身地,経歴には謎が多い。このことから如水,徳重の名は匿名を意図した偽名とも推測され,叙述の大部分を大蔵永常のものとする仮説もある。同書は稲の選種の重要性を雄穂雌穂説に基づいて説き,稲の乾燥に掛け干しの有効なことを教え,棉栽培法を実際に即して記述し,虫害防除法に論及している。この書で述べられた雄穂雌穂説による採種方法や稲の掛け干しの方法などは,江戸後期の農業に大きな影響を与えた。この書は版を重ね,類本,ダイジェスト版なども数多く出版されている。<参考文献>中田謹介他「『農稼業事』解題」(『日本農書全集』7巻)
(葉山禎作)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報