改訂新版 世界大百科事典 「ルニャール」の意味・わかりやすい解説
ルニャール
Jean-François Regnard
生没年:1655-1709
フランスの劇作家。豊かな商人の子としてパリに生まれる。1678年イタリア旅行の途中海賊に襲われアルジェなどで奴隷生活を送る。81年身代金を払い自由になると体験をもとに小説《プロバンスの女》を書く。北欧諸国を旅した後82年パリに戻り財務官となる。気晴しに喜劇を書きはじめ,88-95年《サン・ジェルマンの縁日》(1695)ほか10編の喜劇をイタリア劇団に提供。1694-1708年はコメディ・フランセーズのために筆をとり,《賭博狂》(1696),《ぼんやり男》(1697),《恋の狂気》(1704),《包括受遺者》(1708)など10編を書いた。彼はモリエールの後継者たらんとして性格喜劇を目ざしたが,登場人物の性格を深く掘り下げず,もっぱら軽妙で愉快な台詞を用いたはでな笑いを追い求めたのみに終わる。むしろモリエールの笑劇作家としての一面だけを受け継いだと言えよう。
執筆者:鈴木 康司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報