日本大百科全書(ニッポニカ) 「オラン」の意味・わかりやすい解説
オラン
おらん
Oran
北アフリカ、アルジェリアの地中海沿岸西部、オラン湾に面した港湾都市。オラン県の県都。アラビア語ではワフラーンWahranという。人口65万5852(1998)、116万5687(2008センサス)。同国第二の人口をもち、西部地域の商工業、文化の中心地である。港を中心にヨーロッパ風市街が広がり、北西の山腹にかけ伝統的な市街がある。西側にメルセル・ケビル軍港がある。
10世紀にスペイン系イスラム教徒により建設された。フランス植民地時代、アルジェリア3県のうちのオラン県の県庁所在地となり、近代的港湾施設、鉄道も建設され、農産物、鉱産物の輸出、工業製品の輸入港として発展した。背後のオラン平野にはヨーロッパ人が多数入植し、全国的にもヨーロッパ人の経営する農園がもっとも多い地域で、オランは独立までアルジェリアでヨーロッパ人人口が多数を占める唯一の都市であった。スペイン系移民の割合が多く、スペイン風の建物が残り、市街の中心に広場があるさまは、南アメリカの都市によく似ている。カミュの名作『ペスト』の舞台として知られる。独立後多くのヨーロッパ人は引き揚げたが、アルジェと同様に人口集中が続き、20年間に人口は3倍以上に増加した。工業は機械、化学、食品、繊維などがある。オラン総合大学の建設には日本も協力した。南西8キロメートルにはラ・セニア国際空港がある。
[藤井宏志]