改訂新版 世界大百科事典 「六矣廛」の意味・わかりやすい解説
六矣廛 (ろくいてん)
朝鮮の李朝時代,ソウルに存在していた特権的な御用商人たる廛人の中で特に規模の大きかった6種の商店。〈りくいてん〉ともいい,六注比廛とも呼ばれる。都に御用商人を置く制度は高麗時代から存在し,李朝も1399年ソウルに市廛左右行廊を置いてその制度を受け継いだが,六矣廛は16世紀から17世紀の間に成立したものと思われる。〈矣〉の字義をめぐってはさまざまな解釈があるが,矣は股の字に等しく,6種の特権的な株を意味するとする説が有力である。政府の商業統制機関である平市署の監督下に,毎年多大の国役負担を行う代償として,政府からの資金援助,乱廛(廛人に与えられていた特定商品の独占的取扱い権を破ろうとする行為)の禁止等の特権を与えられていた。一般廛人の禁乱廛権を廃止した1791年の辛亥通共以後も,六矣廛に限ってはその特権が維持され,1894年まで存続した。六矣廛を構成した商店は時期により異なるが,たとえば19世紀初期には,絹織物,綿布,綿紬,紙,苧布,内外魚物を扱う商店で構成されていた。またときには商店数が七つや八つになったこともある。
執筆者:宮嶋 博史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報