日本大百科全書(ニッポニカ) 「北米航空宇宙防衛軍」の意味・わかりやすい解説
北米航空宇宙防衛軍
ほくべいこうくううちゅうぼうえいぐん
North American aerospace defence command
略称NORAD。北米大陸を戦略攻撃から守る目的で、アメリカとカナダの両国が1957年に共同で設立した組織。司令部を、コロラド州コロラド・スプリングスの、シャイアン山の地下基地に置いている。アメリカ、カナダの80か所以上に警戒レーダーを配置し、防空システムとアメリカおよびカナダ軍の要撃戦闘機約300機により、カナダとアメリカの防空識別圏に侵入する全航空機への対処、対宇宙警戒、対戦略弾道ミサイル警戒を行っている。
対宇宙警戒および対戦略弾道ミサイル警戒には、インド洋と西半球に3基の早期警戒衛星を宇宙探知・追跡システム(SPADATS)として配置するほか、大陸間弾道ミサイル探知用の弾道ミサイル早期警戒システム(BMEWS)3基地、その補助用にコブラディーン・レーダーと、周辺捕捉レーダー、攻撃専用レーダー(PARCS)を使用している。また潜水艦発射弾道ミサイル警戒用には、ペイブポウ・レーダーが使われる。爆撃機や巡航ミサイルなどの警戒用には、旧式の遠距離早期警戒(DEW)ラインにかわって、北部警戒システム(NWS)新型レーダーが建設されている。冷戦終結後は麻薬取締り監視も任務に加えられ、任務量の約3分の1を占めるに至っている。
[青木謙知]