化学辞典 第2版 「十バナジン酸」の解説
十バナジン酸(塩)
ジュウバナジンサンエン
decavanadic acid(decavanadate)
MⅠ6[V10O28].バナジウムの代表的なイソポリ酸(塩).IUPAC体系名はオクタコサオキシド十バナジン酸(塩).遊離酸は水溶液中で存在が認められる.Ca塩は,天然にパスコイト(pascoite)として存在する.V2O5とNaOHの水溶液中の反応で,NaVO3水溶液をつくり,これにHClO4を加えて放置して,液が橙赤色になった後,液を濃縮するとNa塩が得られる.正八面体型の10個のVO6が縮合した構造のイソポリ酸イオン [V10O28]6- をもつ.V-O 1.6 Å(末端),1.8~2.4 Å(架橋).Ca3[V10O28]・17H2Oは単斜晶系,Na6[V10O28]・18H2Oは三斜晶系.アルカリ金属などの塩は,赤橙色の結晶.水に可溶.水溶液はほぼ中性を示す.中性付近の水溶液中でも [V10O28]6- として存在する.しかし,水溶液を長時間放置すると,さらに縮合が進んだK[V3O8],K3[V5O14]などを沈殿する.[CAS 12200-88-3:Na塩]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報