単巻変圧器(読み)たんまきへんあつき(英語表記)autotransformer

翻訳|autotransformer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「単巻変圧器」の意味・わかりやすい解説

単巻変圧器
たんまきへんあつき
autotransformer

鉄心に巻かれた巻線が1個だけの変圧器オートトランスともいう。低圧側の1端子は高圧側の1端子と接続されて一体となっており、他の端子は高圧巻線の途中から引き出されている。高圧巻線の巻回数をn1、低圧巻線の巻回数をn2とすれば(若干の誤差を無視すれば)、高圧側電圧V1と低圧側電圧V2の関係は、

となる。高圧巻線の一部は低圧巻線に共用されているが、この部分の電流は高圧側電流と低圧側電流が打ち消しあうので低圧側電流より小さくなる。このため二巻線の普通の変圧器よりも、同じ容量に対して材料も少なく、小型ですむ。しかし、高圧側からの異常高電圧が直接低圧側に侵入するおそれがあるため、一般的には使用されない。n1n2が接近するほどこの異常高電圧の問題が少なくなるし、高圧側と低圧側の電流の打ち消しによる小型化の効果も大きくなる。このため電圧調整変圧器には多く採用される。また、電圧を異にする直接接地系統間の連系変圧器としても使用されるほか、変流器巻数比を調整するための補償変流器およびテレビジョンやラジオ受信器内の変圧器などに広く採用されている。

[岡村正巳・大浦好文]


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改訂新版 世界大百科事典 「単巻変圧器」の意味・わかりやすい解説

単巻変圧器 (たんまきへんあつき)
autotransformer

一次巻線と二次巻線の相互に独立した2個の巻線が巻かれている一般の変圧器に対し,一次と二次巻線とが共通になっている部分のある変圧器を単巻変圧器という。共通部分を分路巻線,他の部分を直列巻線という。分路巻線に流れる電流は一次と二次の電流が逆方向に流れるため,その差となり,細い線ですむ。したがって一般の変圧器に比して小型になり,効率も高い。一次と二次との電圧差が小さいときはとくに有利となる。この差が大であると,共通部分が少なく,有利性が低下するし,また,一次と二次両巻線が絶縁されていないので,高圧側に異常高電圧が発生すると低圧側に直接侵入しやすく,危険性が大で,実用的でない。大容量変圧器の例では500kVより275kVに電圧降下させる電力用変圧器はすべて単巻変圧器である。小型の電圧調整用変圧器にも単巻変圧器が多く用いられ,巻線に数個の口出し線(タップ)を設けて,これの切換えまたは移動ブラシによって電圧を調整している。円筒状の鉄心に巻線を巻き,その中心を軸として,巻線上を円周上にブラシを移動させ,二次側に任意の電圧を得られるようにした単巻変圧器がある。これをスライダックslidacといっている。100V用では0~130V程度の任意の電圧が得られ,実験室などで,手軽な可変電圧電源として広く用いられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「単巻変圧器」の意味・わかりやすい解説

単巻変圧器
たんまきへんあつき

オートトランス」のページをご覧ください。

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