原鯨類化石(読み)げんげいるいかせき(その他表記)protocetid fossils

知恵蔵 「原鯨類化石」の解説

原鯨類化石

クジラ祖先はメソニクス科(無肉歯目)か偶蹄目か、と論争されてきた。近年、パキスタンの約4700万年前の地層からほぼ全身の骨格2体が発見され、原鯨類(ムカシクジラ類)のアルチオケタス・クラビスとロドケタス・バロキスタネンシスと命名。共に後肢の足首の骨が、偶蹄目に特有の形を示す。かかとの骨の両端に、滑車という半円形の関節面が存在する。従来、原鯨類では歯がメソニクス科との中間的特徴を示し、耳の構造が陸生哺乳類と同じであったため、その類縁が示唆されていた。分子生物学では、例えばDNAのレトロポゾンを共通に持っていれば近縁とみなされる。現生のクジラ類と偶蹄類の多種類で調べられた結果、偶蹄類中でカバだけがすべてのクジラ類と共通の特徴を持っていた。偶蹄目の動物に共通の祖先がいて、次々と各種偶蹄類が分岐して、最後にカバとクジラが分かれたという考え方だ。古生物学と分子生物学の成果が調和的となり、クジラ類の起源を偶蹄類とみなす考えが有力となってきた。

(小畠郁生 国立科学博物館名誉館員 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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