収縮性心膜炎
しゅうしゅくせいしんまくえん
Constrictive pericarditis
(循環器の病気)
急性心膜炎などが治る過程で、心膜の肥厚、癒着、線維化、石灰化が生じ、心臓が十分に拡張できない状態です。
原因不明であることが最も多く、結核性心膜炎が病因として重要ですが、最近は放射線照射後や開心術後など各種の治療に関連したものも増加してきています。
全身倦怠感、息切れ、腹部膨満感、下腿浮腫などが現れます。
重症の場合は、うっ血肝による肝機能障害や吸収障害による低栄養状態が起こります。
身体所見では、頸静脈怒張(ふくれる)、肝腫大、下腿浮腫などが認められます。胸部X線やCT検査で、心膜の石灰化と広がりを診断します(図12)。心臓カテーテル検査で右心室と左心室の圧を同時に記録すると、特徴的な圧波形が記録されます。
薬物で対症的に経過をみる場合は、安静にし、塩分制限を行い、状態に応じて利尿薬などを投与します。十分にコントロールできない場合は、原則として手術が必要です。
手術のタイミングに関しては、早期のほうが術後の成績がよいといわれ、進行すると著しい拡張障害により心筋の変性や萎縮を引き起こすばかりでなく、心房細動や肝機能障害、低栄養などが術後の成績を不良にする可能性があります。
手術では、肥厚あるいは石灰化した心膜を外科的に切除しますが、心臓を止めて人工心肺を用いて循環補助を行ったほうがよいかどうかは、患者さんごとに検討されます。
手術前の状態が悪い場合は、十分に心膜を切除しても心不全症状が長引く場合があります。十分に心膜を切除できない場合もあり、手術による死亡は5~10%程度あります。手術をした場合の5年生存率は80%と比較的良好です。
循環器内科医、心臓外科医に相談してください。とくに、手術前の状態、手術適応、どの程度完全に心膜を剥離できるかなどの説明を十分受けることが大切です。
矢崎 善一
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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収縮性心膜炎
しゅうしゅくせいしんまくえん
constrictive pericarditis
ピック病ともいう。急性心膜炎にかかったあとで,心膜が広範囲に肥厚し,ときには石灰沈着も伴い,そのために心臓の拡張が制限され,心臓機能が低下して,うっ血性心不全が生じる状態をいう。浮腫,肝腫脹,腹水などの症状がある。結核性のことが多く,そのほかリウマチ性,化膿性,ウイルス性心膜炎,まれに尿毒症,放射線障害などが原因となる。心膜切除術によって肥厚した心膜を切除して治療する。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の収縮性心膜炎の言及
【心囊炎】より
…診断は定型的な症状を呈した場合,[心電図],胸部X線,[心エコー図]などの所見から比較的容易であるが,臨床経過は原因疾患によって異なり,非定型症状のまま慢性期に移行し,徐々に進行する心拡大や心不全症状を発現して初めて診断されることも少なくない。多量の心膜液貯留により心タンポナーデをきたしたり,心膜の癒合器質化が起こり心室の拡張・収縮障害をきたす収縮性心膜炎に至った場合には,外科的治療を必要とする。【椎名 明】。…
※「収縮性心膜炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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