改訂新版 世界大百科事典 「台島型植物群」の意味・わかりやすい解説
台島型植物群 (だいじまがたしょくぶつぐん)
日本各地の第三系中新統下部から発見される植物化石群。カシ,コナラ,クリ,マテバシイ,クス,タブノキ,フウ,ヤマモモ,ケヤキその他,暖帯性常緑広葉樹と暖温帯落葉樹を主体とし,少量の針葉樹が混じる植物群で,温暖湿潤な海岸近くの低地のものと考えられている。秋田県男鹿半島に分布する台島層中に典型的な化石群が発見されているためこの名がある。この植物化石群は,九州北部から北海道中部に至る各地から広く発見されており,中新世初期が現在に比べて著しく温暖であったことを示す。全体として北日本では落葉樹や針葉樹が多く,南へいくほど常緑樹の比率が増す傾向がある。なおこの台島型植物群の時代より少し前には,阿仁合(あにあい)型植物群とよばれる温冷帯落葉樹や針葉樹を主とする寒冷気候の植物群が,日本各地に広く分布していた。
執筆者:鎮西 清高
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報