常緑樹の対語で,葉の寿命が1年に満たず,すべての成葉を失って休眠状態に入る時期をもつ樹木。落葉樹の大半は広葉樹であるが,カラマツ,セコイアのような針葉樹の一部も含まれる。年間を通じて高温・多湿で,寒さや乾燥という季節の明らかでない熱帯多雨林においても落葉樹は存在し,いつでも一部の種や個体が落葉して裸になっているが,1本の木で落葉した枝と葉のついた枝をもっていたり,裸になっても半月ほどで新しく葉を展開してしまうなど,常緑樹との区別ははっきりしない。雨緑林・夏緑林のように,乾燥・低温という生育に不適な季節がはっきりと出現してはじめて落葉樹の存在が明りょうとなる。生育不適期には,葉から養分を回収しておいて落葉し休眠する方が,葉を展開したまま被害を受けたり,光合成ができずに呼吸が上回ってマイナスの物質生産になるよりも植物にとって有利なためであると考えられている。
執筆者:藤田 昇
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生育不適期に葉を落とす樹木のことで、乾期に落葉する雨緑樹と低温期に落葉する夏緑樹がある。雨緑林は、4~6か月の乾期をもち、1000~2000ミリメートルの年降水量を有する熱帯から亜熱帯地域に発達し、熱帯多雨林からサバナへの移行部で、多雨林を取り巻くように分布する。チークTectona grandis L. F.、サラソウジュ(サル)Shorea robusta Gaertn.は南アジアの雨緑林の構成種で、造林樹種としてもよく知られている。林内は放牧に利用され、乾期には野火のほか人為的な火入れも行われる。このため、下層植生が焼かれるので、林冠木は耐火性をもっている。一方、夏緑林は北半球の温帯北部に広く発達する。落葉は低温に対する適応であるが、落葉は温度を高く維持してもおこる。落葉樹林の北限は日平均気温10℃が120日以上までで、それ以下になると針葉樹に置き換わる。
[大澤雅彦]
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…落葉樹の対語で,葉の寿命が1年以上あり,年中葉をつけている樹木。落葉樹とは葉の寿命で区別されるが,葉が革質や肉質で厚く光沢があるので,葉のついた状態でも,落葉樹と一見して見分けられることが多い。…
※「落葉樹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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