針のように細長く、堅い葉をつける樹木の総称。針葉樹は樹脂を多量に含み、揮発性成分に富んでいる。植物分類上では裸子植物中の球果植物類とイチイ類にまとめられる。細長い葉をもつとはいっても、ツツジ科のツガザクラ、エリカなどは針葉樹には含まれない。
針葉樹は普通高木になるが、ハイマツ、ハイネズ、リシリビャクシンなどの低木もある。葉は常緑のものが多いため、常磐木(ときわぎ)とよばれることもあるが、カラマツなどでは落葉する。葉の形はさまざまで、トウヒ、モミ、スギ、マツなどでは幅が狭く針状となるが、ヒノキ、アスナロなどでは鱗(りん)状、ナギなどでは広葉樹のように幅広くなる。花は雌花と雄花に分かれる単性花であるが、マツ、スギ、トウヒ、モミなどでは同じ株に両花ともつく雌雄同株であり、イチイ、マキなどではそれぞれの花が別株につく雌雄異株となる。一般に実は「まつかさ」とよばれる球果をつくるが、マツ、トウヒ、カラマツなどでは種子の一端に翅(し)がある。また、イチイの種子は多肉の甘い仮種皮に包まれるし、マキでは堅い石果様となる。大形の種子をつくるものにはパラナマツなどがある。
[鮫島惇一郎]
世界の針葉樹はマキ、イヌガヤ、マツ、スギ、ヒノキ、ナンヨウスギ、イチイの7科に分けられるが、イチイを除く6科はすべて球果植物綱(マツ綱)にまとめられる。イチイ科はイチイ綱に含まれる唯一の科で、系統的にはかなり古い地質時代から分化してきた植物と考えられる。これらの7科は約50属に分けられ、およそ500種を含む。このうち日本には6科17属、約40種があり、コウヤマキ、アスナロ、スギの3属は日本固有のものである。北半球の針葉樹にはマツ科が多く、スギ、ヒノキ科がこれに次いでいる。南半球ではマキ、ナンヨウスギ科のものが多く、いくつかの重要な種を含んでいる。
針葉樹は広葉樹に比べるとやせた乾燥地によく耐えるとされ、成長の最適温度も低いものが多い。したがって低緯度に少なく、高緯度地帯にタイガとよばれる広大なトウヒ、モミ、カラマツなどの針葉樹林を発達させている。一方、温暖な地域の針葉樹林としてマツ、ツガ、スギ、セコイアなどがある。日本に自生するおもな針葉樹のなかで林業上重要なものは、イチイ、カヤ、ヒノキ、サワラ、アスナロ、スギ、コウヤマキ、クロマツ、アカマツ、カラマツ、エゾマツ、アカエゾマツ、ツガ、トガサワラ、オオシラビソ、トドマツなどである。林業樹種の筆頭はスギで、北海道以外ではいちばん多く植林されている。スギは屋久(やく)島から青森県まで分布し、日本ではもっとも大きく、長寿である。とくに屋久島に生育するスギは胸高直径5メートル、高さ30メートルを超え、樹齢は2000年以上になる。有名なスギ林業地としては飫肥(おび)(宮崎県)、吉野(奈良県)、北山(京都府)、天竜(長野県、静岡県)、秋田などがある。針葉樹材のなかではヒノキが最高といわれ、日本の木造建築の優秀性もこのヒノキに負うところが大きい。とりわけ木曽(きそ)のヒノキは有名である。アカエゾマツは楽器材として定評があり、阿寒(あかん)周辺からとれるものが良材とされる。トウヒ、モミ、マツ属などの材からは良質のパルプがつくられるが、消費の増大に伴い、自然林が減少し人工林化が進んでいる。世界一高くなる裸子植物としてはセコイアがあり、大きなものでは胸高直径8メートル、高さ110メートル前後になる。中国で1945年に発見されたメタセコイアは化石植物としてよく知られる。
[鮫島惇一郎]
広葉樹の対語で,針状の葉をもつ樹木という意味ではあるが,実際には裸子植物の針葉樹類(球果植物類)に属する樹木を総称する。したがって,イチョウやソテツは含まないが,葉の幅は広くてもナギは含まれる。針葉樹の葉は一般に針形,線形,鱗形で,カラマツ,セコイアなどを除いて常緑性。雌雄異花で,受粉は風媒,木化した鱗片葉が集まってできた球果をつける。北半球に多く,亜寒帯・亜高山帯では優占種となっている。熱帯や南半球では少ないが,マキ目,ナンヨウスギ目が分布する。針葉樹は一般に幹がまっすぐで,単軸分枝をし,こずえがはっきりする。萌芽能力は弱い。高木になり,北アメリカ西岸にあるセコイアを中心とした針葉樹林は,樹高90mにも達する巨木林で,熱帯多雨林よりも高く世界最大になる。針葉樹材は仮道管が木部の90%を占め,構造が単純で,樹種による差が少ない。英語でsoftwoodというように材は軟らかく,まっすぐで,割裂性がよい。木肌は精細で,軟らかな光沢をもち,白木のままで美しい。建築用材として昔から使われ,和風建物の室内装の主体をなす。またパルプの原材として広く利用されている。日本の造林木の中心で,針葉樹人工林は全森林面積の40%,1000万haを占めている。
執筆者:藤田 昇
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