向・対(読み)むかい

精選版 日本国語大辞典の解説

むかい むかひ【向・対】

〘名〙 (動詞「むかう(向)」の連用形の名詞化)
① 互いに正面に対すること。相対すること。また、自分からみて対する方向。正面。前面。むこう。
※万葉(8C後)一〇・一八九三「出でて見る向(むかひ)の岡に本繁く咲きたる花の成らずは止まじ」
※伊勢物語(10C前)九九「むかひに立てたりける車に」
② 相手。
※霊雲院本湯山聯句抄(1504)「螳蜋のいもじりが蝉をつかまふとてねらが、其螳をば又鴉がねらうぞ。たがいにむかいをとらうとて我をば忘たぞ」
③ 道などをへだてて反対側にある家。玄関が向かい合っている家。おむかい。
※浄瑠璃・大経師昔暦(1715)上「むかいのねり物屋の灰毛猫は」
④ 向こうづけ。むこう。
咄本・軽口ひやう金房(1688‐1704)二「さざいのにかやきを、向(ムカ)ひに出しけれは」

むか・う むかふ【向・対】

[1] 〘自ワ五(ハ四)〙 (「むきあう(向合)」の変化した語)
① 他の正面に対して自分の正面を向ける。相対する。
※古事記(712)中・歌謡「尾張に 直に牟迦幣(ムカヘ)る 尾津の崎なる 一つ松 あせを」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)市振「あした旅立に、我々にむかひて、行衛しらぬ旅のうさ、〈略〉と泪を落す」
※はやり唄(1902)〈小杉天外〉四「竹代も今夜ばかりは机に対(ムカ)うことを止めて」
② 互いに相手を前にする。対座する。
※古事記(712)中・歌謡「吾が見し子に うたたけだに 牟迦比(ムカヒ)をるかも い副ひをるかも」
※平家(13C前)二「入道ふしめになて、〈略〉あのすがたに腹巻をきて向はん事、おもばゆうはづかしうや思はれけん」
③ その方向に面を向けて進む。おもむく。出むく。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「日の本のちちははにむかふべきたよりをあたへむ」
※平家(13C前)四「都合其勢一千人、手々にたい松もって如意が峯へぞむかひける」
④ 時が近づく。その時になろうとする。また、時が移ってその状態になろうとする。
※玉葉(1312)秋上・五三五「また秋のうれへの色にむかふなり尾花が風に庭の月影〈従三位親子〉」
※日葡辞書(1603‐04)「ハルニ mucǒ(ムカウ)
⑤ 二つのものが肩をならべる。相当する。匹敵する。
※万葉(8C後)四・六七八「直に逢ひて見てばのみこそたまきはる命に向(むかふ)吾が恋止まめ」
※天正本狂言・今参(室町末‐近世初)「一人が千人にむかふ者をおかんとゆふ」
⑥ はむかう。逆らう。はりあう。対峙する。
※新訳華厳経音義私記(794)「与敵 下牟可布 音着」
※日葡辞書(1603‐04)「テキニ mucǒ(ムカウ)
[2] 〘他ハ下二〙 向かわせる。向かうようにする。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇「悲び哭きつつ逆(ムカヘ)(すす)み来る」
※天草本平家(1592)一「クゲ ブケ トモニ ヲモテヲ mucaye(ムカエ) カタヲ ナラブル ヒトモ ゴザナカッタ」

むかえ むかへ【向・対】

[1] (「むかい(向)」の変化した語か) =むかい(向)
※うたたね(1240頃)「むかへの山を見れば、雲のいくへともなく折り重なりて」
[2] 〘接尾〙 (対) 二つで一組になるものを数える時に用いる。つい。
※随筆・松屋筆記(1818‐45頃)八三「神酒の瓶子一対をひとむかへ、二対をふたむかへ〈略〉といへり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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