…これに〈こぶし〉を加えて,より俗謡に近づけたのが古賀政男で,《酒は涙か溜息か》(高橋掬太郎作詞,1931)では,ギターが三味線風に用いられ,歌謡曲とギターが密接に結びつけられ,また歌謡曲の音楽様式が確立したのである。
[ジャズ歌謡]
昭和に入ってまもなく,ビクター,コロムビア等外国のレコード会社が日本に進出し,ジャズ等ポピュラー音楽がどんどん輸入され,《君恋し》(時雨音羽作詞,佐々紅華作曲,1928)等ジャズのリズムをもった曲が作られるようになった。外国系リズムやフィーリングをもった伴奏の上に歌謡曲の旋律をのせてゆくスタイルを完成させたのは服部良一で,《別れのブルース》(藤浦洸作詞,1937)では,ブルースのブームをひきおこした。…
…蓄音機とレコードが登場し,流行歌全盛時代がおとずれた。《君恋し》《東京行進曲》など歌謡史上に残るヒット曲が生みだされたのは1929年のことである。ついで不景気が底に達した31年に入ると,古賀政男作曲の《酒は涙か溜息か》《影を慕ひて》などの哀調をおびた旋律が人々の心をとらえた。…
※「君恋し」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」