和歌体十種(読み)わかていじっしゅ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「和歌体十種」の意味・わかりやすい解説

和歌体十種
わかていじっしゅ

平安時代中期の歌学書。『忠岑 (ただみね) 十体』ともいう。壬生 (みぶ) 忠岑著。天慶8 (945) 年成立。漢文体の短い序文に続いて,本文として「古歌体」「神妙体」「直体」「余情体」「写思体」「高情体」「器量体」「比興体」「華麗体」「両方体」の 10体を掲げる。各体とも標目のあと,各5首の例歌を示し,次いで漢文体の簡潔な解説をつける。「詞凡流といえども,義幽玄に入る」といわれる「高情体」を最もすぐれた体とし,「神妙体」「余情体」「器量体」はこれから派生すると説く。また「写思体」をも重んじている。「高情体」はのちの「幽玄体」に,「写思体」は「有心 (うしん) 体」に相当すると考えられる。中国の詩学書や空海の『文鏡秘府論』,藤原浜成の『歌経標式』などからの影響が認められる。『道済十体』 (佚書) などに深い影響を及ぼした。

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世界大百科事典(旧版)内の和歌体十種の言及

【壬生忠岑】より

…《古今集》以下の勅撰集に84首,家集に《忠岑集》がある。和歌を10種類の歌体に分け,5首ずつの例歌と歌体の説明を漢文で施した歌論書《和歌体十種》(《忠岑十体(ただみねじつてい)》ともいう)は忠岑作と伝えられるが,最近では忠岑に仮託されたとする偽書説が有力である。《和歌体十種》を根拠として,忠岑は90歳ころまで生存したとされていたが,もう少し早い時期に没したらしい。…

※「和歌体十種」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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