…《万葉集》から《千載集》までの歌風の変遷を,鑑賞的に歌を批評しつつたどり,《古今集》の歌を本体とすべきことを力説。また,〈幽玄体〉を提唱し,天台宗の止観からの影響をうかがわせるなどの点に特色を有する。【赤瀬 知子】。…
…俊成はここで天台止観によそえて和歌の変遷を内観し(最初の和歌史観),浮言綺語(ふげんきぎよ)の和歌が仏法悟得の機縁たりうるという新価値観(狂言綺語観)を提示し,さらに《古今集》を歌の本体と仰ぐ伝統観(古典の定立)を述べる。俊成の新風は広義の幽玄体といわれ,幻想的な詩趣と優美な声調の調和の中に,陰翳(いんえい)のふかい耽美的情念を流露させ,抒情の世界に余情の新領域をひらいた。自讃歌〈夕されば野辺の秋風身にしみて鶉啼くなり深草の里〉(《千載集》巻四)は著名。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」