歌経標式(読み)かきょうひょうしき

精選版 日本国語大辞典 「歌経標式」の意味・読み・例文・類語

かきょうひょうしき カキャウヘウシキ【歌経標式】

奈良末期歌学書。一巻。藤原浜成著。宝亀三年(七七二成立で、日本最古歌学書。喜撰式孫姫式(ひこひめしき)、石見女式(いわみのじょしき)とともに、和歌四式といわれる。歌病(かへい)歌体などについて例示し解説したもので、詩論影響が大きい。真本系(異本系)と抄本系(流布本系)の二系統の伝本があり、真本系の竹柏園本の発見により、偽書説は否定された。浜成式

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デジタル大辞泉 「歌経標式」の意味・読み・例文・類語

かきょうひょうしき〔カキヤウヘウシキ〕【歌経標式】

奈良末期の歌学書。1巻。藤原浜成著。宝亀3年(772)成立。和歌四式の一。歌病歌体などについて論じたもので、中国の詩論の影響が大。日本最古の歌学書。浜成式。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歌経標式」の意味・わかりやすい解説

歌経標式
かきょうひょうしき

奈良時代の歌学書。藤原浜成(はまなり)著。序、跋(ばつ)によれば、772年(宝亀3)5月勅命により成立。偽作説もあったが、真作と認めうる。最古の歌学書で、とくに歌病(かへい)論は平安時代以降、変化しつつも大きな影響を残した。序によれば書名は『歌式(かしき)』。『喜撰式(きせんしき)』『孫姫式(ひこひめしき)』『石見女式(いわみのじょしき)』と並んで『浜成式』ともよばれ、あわせて「和歌四式(ししき)」という。古くから抄出本がある。歌が俗語と異なるのは音韻によるとし、とくに韻律を重視して各種に分類、例歌を示すが、中心をなす歌病は、歌句中の特定の位置における同音重出の否定に関する規定である。歌病7種と歌体3種について名称をあげて説明、歌体(求韻、査体、雑体)は各体をさらに下位分類しているが、分類基準はかならずしも統一されていない。漢文体であるが、和歌は万葉仮名で、13首の他書にみえない歌があり、歌自体および上代特殊仮名づかいにほぼ適合することから、奈良時代中・末期の作(短歌以外の形式も含む)と認めうる。中国詩論の影響下にあるが、和歌史の展開の反映のあとも明らかである。

[藤平春男]

『佐佐木信綱編『日本歌学大系1』(1957・風間書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「歌経標式」の意味・わかりやすい解説

歌経標式 (かきょうひょうしき)

別名《浜成式(はまなりしき)》。現存最古の歌学書。772年(宝亀3)参議藤原浜成が,光仁天皇の勅によってものした書。中国詩学をそのまま転用し,和歌論としては不自然な所が多いが,押韻を論じたり,雅語俗語の区別を論じており独自性もある。後世の歌学で本書の影響を受けぬ書はない。平安時代以降抄本が流布し真本は姿を消したので,偽書とされることが多かったが,武田祐吉らにより真本が発見確認された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歌経標式」の意味・わかりやすい解説

歌経標式
かきょうひょうしき

奈良時代末の歌学書。藤原浜成著。『浜成式』ともいう。1冊。宝亀3 (772) 年勅命により記述したといわれる。伝本に真本と抄本との2系統があり,抄本は煩雑な真本から必要な部分だけ抄出したもので,平安時代中期以後の成立らしい。漢文で記し,和歌の部分だけ万葉がなを用いる。同音の重複を避けようとする「歌病」と,長歌と短歌,音数律,歌語と俗語などについて論じた「歌体」とから成る。中国の詩学を形式的に取入れた面もあるが,韻律や修辞などの点から和歌を初めて体系的に論じた意義は大きく,『喜撰式』『孫姫 (ひこひめ) 式』『石見女 (いわみのじょ) 式』 (本書を含めて「和歌四式」という) をはじめとする後続の歌学書に大きな影響を与えた。

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百科事典マイペディア 「歌経標式」の意味・わかりやすい解説

歌経標式【かきょうひょうしき】

現存最古の歌論書。《浜成式(はまなりしき)》とも。772年成立。藤原浜成著。中国詩学を転用して,和歌修辞上の問題点を歌病(かへい)として7種あげ,次に歌体を3項目に分けて論じている。表記は漢文だが和歌は万葉仮名。続く《喜撰式》《孫姫(ひこひめ)式》《石見女式》と合わせて和歌四式という。
→関連項目奥義抄

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旺文社日本史事典 三訂版 「歌経標式」の解説

歌経標式
かきょうひょうしき

奈良時代,藤原浜成 (はまなり) の歌学書
『浜成式』ともいう。772年撰。2巻。歌病(和歌のもつ修辞的欠陥)・歌体など和歌の批評基準について記す。現存最古の歌学書で,平安時代以後の歌論に大きな影響を与えた。

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世界大百科事典(旧版)内の歌経標式の言及

【歌論】より

…〈歌論〉と呼びうるものの最初は何か。歌論書の最古のものは藤原浜成撰《歌経標式(かきようひようしき)》(772成立)である。が,《万葉集》の題詞および左注には,〈歌論〉と呼ぶべきものも少なからず含まれており,〈歌論〉の始発は《万葉集》としていい。…

※「歌経標式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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