日本大百科全書(ニッポニカ) 「国朝漢学師承記」の意味・わかりやすい解説
国朝漢学師承記
こくちょうかんがくししょうき
全8巻。清(しん)の江藩(こうはん)(1756―1831。字(あざな)は子屏(しへい)、号は鄭堂(ていどう)、江蘇(こうそ)省甘泉県〈揚州〉の人)の著。1818年(嘉慶23)、両広総督であった阮元(げんげん)の幕下にいて刊行、版を重ね『国朝経師経義目録』『国朝宋学淵源記(そうがくえんげんき)』を付す。それぞれの学者のために書かれた碑・誌・伝・状とその著述にみえる経説を組み合わせての列伝の体をとりつつ、まだ発展途上にあった清朝経学の生きた学術史を形成している。師承とは漢学で重んぜられた学問の伝承をいい、学問研究の方法として漢学を提唱し、宋学(そうがく)派の人の好む唐宋八家の文を排して、駢文(べんぶん)(伝統的な美文)をたたえる文学の主張をも込めているところから、桐城(とうじょう)派の方東樹(ほうとうじゅ)による『漢学商兌(しょうだ)』などの批判をよんだ。
[近藤光男]